スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
「まだしばらくお世話になると思いますけど、仲良くしてやってください」
友人としても、という意味を込めてとりあえず言葉にした時だ。
羽織っている薄手のテーラードジャケットのポケットに入れていたスマホが震えて、私は識嶋さんに断りを入れると暗いディスプレイをタップした。
そうすれば、通知にメールのマークがあって。
何だか嫌な予感がしたけれど、メールアプリを開く。
すると、予感的中。
アドレスに名前はなく、件名には【ダメだよ美織】という文字。
恐る恐る本文を表示させると、そこには──
『社長の息子だからって色目使うのは良くないよ。僕がもっと美織にかまってあげないとダメだね』
驚愕の、文章。
「……どういう、こと?」
手が震えて、出した声は自分で思ったよりも小さくて。
私の異変に気付いたのか、識嶋さんが「どうした?」と眉間に皺を寄せた。
「今、こんなメールが」
言いながら、識嶋さんにメールを見せると、内容を確認した彼は目を細めて警戒するように周囲を伺う。
「……社内にいるのか」
「嘘……」
知り合いを、友人を信じたいと思いながらも、犯人がその中にいる可能性はゼロじゃないとどこかで覚悟はしていた。
だけど、社内での状況がわかるということは、会社の人間の確立が高いということで。