溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「芽衣ちゃんも手を動かしたほうがいいんじゃないかなー」
やんわり言っても彼女はぴんと来ないらしく、椅子を回転させて私のとなりに来た。
「もう見積もり作成も終わりましたし。あとは瀬戸さんの指示がないと動けないんですもん」
「あのね、仕事は与えられるのを待つんじゃなくて、自分から――」
「あ、瀬戸さん! おつかれさまですぅ」
芽衣ちゃんの目線が私を飛び越える。
「ああ」と背後から聞こえた声に、身体がこわばった。
「市原さん、見積書できてる?」
「はい、ばっちりです」
「じゃあ共有に上げて。それから工場に納期の確認と、制作担当とスケジュールの調整。よろしく」
「はあい」
足音が離れていったのを確認して、私は振り返る。瀬戸くんの姿はなく、芽衣ちゃんがメール画面を立ち上げたところだった。
「芽衣ちゃん、報告書は作らなくていいの?」
「え? 私がですか? いっつも瀬戸さんが作ってますよ」
いや、そこはアシスタントの仕事でしょう。と思いつつ、チームそれぞれのやり方があるから下手に口出しはできない。
鼻歌を歌いながらキーボードを打つ彼女から視線を外し、ため息を漏らした。