溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
フロアに戻ると総務部の電気が点いているだけになっていた。
「電気、点けます?」
頭上の蛍光灯を見やると、瀬戸くんが「いや、いい」と答える。
「印刷して部長のデスクに置くだけだから」
うちの部署には課長という役職の人間がいない。営業部を総括するのは営業部長で、その下は一般社員ということになる。瀬戸くんはリーダーという立場だけど、実質課長のポストに就いているようなものだった。
「私はもう帰りますけど……」
「じゃあ一緒に出よう。ちょっと待ってて」
瀬戸くんはノートパソコンを開いてキーを叩いた。コピー機がうなりを上げて動き出す。
印刷物を彼に渡そうと機械に近づいたとき、排出トレイに一枚の紙が残っているのが見えた。
ファックスだろうか。何気なく手に取った瞬間、氷水を浴びせられたような衝撃を受けた。
立ち尽くしている私に気づき、瀬戸くんが駆け寄ってくる。
「どうした? ミスプリ?」
私の手元を覗き込んだ彼が、息を呑む。
「なんだよ、これ……」
コピー用紙には、マジックペンで書いたような太い字が踊っていた。
【営業事務の西尾光希は 不倫している】