溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
この一か月半、瀬戸くんとの時間があまりに濃かったせいか、たった一週間離れただけで何かを失ってしまった気がする。
彼から触れてきてくれたときに、もっと応えていればよかった。そう思うくらい、心にすきま風が吹いている。
せめて私の指先にだけでも、瀬戸くんのぬくもりを――
ふわりと瀬戸くんの匂いが漂って、気が付くと抱きしめられていた。
背中に回された腕に力が込められる。
「光希」
ぎゅっと抱きしめられて、嬉しいのに泣きそうになった。気持ちが高ぶると、悲しくもないのに涙が出る。
言わなければと思った。話したいことはたくさんある。
章介さんと話したこと、瑠璃さんのやったこと、杏子さんとの会話。それよりもなによりも、伝えたい気持ちがある。
「生吹さん」
彼が私を見下ろす。どことなく苦しげな瞳に、どきりとする。
「あのね、私」
いきなり唇を塞がれた。
まるで話を遮るようにキスをされ、合わさった口の隙間からどちらのものともつかない吐息がこぼれていく。
「生吹、さん」
玄関からすぐの廊下に立ったままで、長い時間唇を合わせた。私の腰を抱いていた彼の右手が少しずつ下に下がっていく。