溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
およそ二ヶ月前、この場所で瀬戸くんと対峙したときには焦りしかなかったのに、今、私の胸にはあたたかい感情がたくさん詰まっている。
不思議だった。
たった二ヶ月で、気持ちも生活も、それまでとはがらりと変わってしまった。
「やっぱり、瀬戸くんはこわいです」
「え?」
私のつぶやきを拾って、彼は驚いたように目を広げた。
「だって、私をまるごと変えてしまうから」
八年付き合った人とひどい別れ方をして、もう二度と人を好きになんてなれないと思っていたのに、二ヶ月も経たないうちに恋が生まれて、結婚の話まで出ている。
瀬戸くんは苦笑した。
「それを言うなら、光希もだけど」
「え?」
「突然目の前に現れて、俺の人生を変えたじゃないか」
手すりを背にして向き直った彼は、もう虚ろな目をしていない。
「俺、異動願いを出そうと思ってるんだ」
さらりと言われた言葉は衝撃的で、でも彼の気持ちに思い至ったとたん、あるべきところにすとんと落ちた。瀬戸くんが本当にやりたい仕事は、営業ではなく企画なのだ。
「部長に相談したんだ。営業で培ってきた顧客や市場についての知識を活かして、企画職に転身したいってね」
「部長は、なんて?」