溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「俺と結婚してください」
喉の奥がつぶれそうだった。こぼれそうになる涙を、懸命に堪える。
「どうして、会社で言うんですか……」
せっかく仕事とプライベートで切り替えていたのに、感情が溢れてしまうじゃない。
「ここは、俺にとって大事な場所だから」
光希とはじめて目線を交わした場所だから。
そう言って、彼は私の左手を引き寄せ、手の甲にキスをした。
「返事は?」
優しくて、ほんの少し苦しそうな瞳に、堪えていたものが溢れる。
声が震える。
「生吹さんと、ずっと一緒にいたい」
ふわりと抱きしめられ、頭が真っ白になるくらいの幸福感に包まれた。
すべてはここから始まったのだ。
ぽっかりと空いていた空洞は温かく満たされ、左手の薬指には月が光っていて、あのときの状況とは正反対だけど。
すべてはここから……。