溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「これまでだって、仕事が忙しすぎて家には寝に帰ってるだけだったし。こっそり部屋を借りたところで気づかれないと思うんだ」
つまり、杏子さんには内緒で家を出るつもりなのだ。
「平気なの? そんなことして」
「完全に引っ越すわけじゃなくて、ある程度の荷物は家に置いておいて。普段はふたりの部屋で生活して、たまに実家に帰るよ」
「大丈夫かな……」
ふたり暮らしという響きは甘美だけど、杏子さんの厳しい顔を思い出すと手放しでは喜べない。
「大丈夫だって。光希は婚約者候補だろ。それに親父も光希のことを気に入ってるし。俺も大樹を見習って多少は要領よく生きなきゃと思ってさ」
何かあればお父さんが味方についてくれるからと、瀬戸くんは言う。
「でも……」
「本当いうと、この部屋が気に入らないってのもある」
「え……?」
声の調子が低くなって、私は顔を上げた。彼がつまらなそうに目線を逸らす。
「ここに、元カレが来てたわけだろ」
「……生吹さんて、結構なヤキモチ焼きさんですよね」
ふいに腕を引っ張られ、フローリングに敷いた布団に倒された。スウェット姿の瀬戸くんが私に覆いかぶさり、天井の照明を隠す。
「敬語使ったから、おしおき」
ふてくされたように言うと、ちゅっと私の唇にキスをしてパジャマのボタンに手をかけた。