溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~



印刷所に寄って差し替え分を受け取り、私たちは東京駅から新幹線に乗り込んだ。両手に抱えていた重たい紙袋を床に置き、地図アプリで仙台営業所の場所を確認する。
 
道中、芽衣ちゃんから聞いたところによると、アイビーマートは仙台を拠点にしている中規模のスーパーマーケットだけど、社長がうちの会社の副社長と知り合いで、そのツテで東京に進出してきたのだという。
 
話を聞きながらぞっとしてしまった。とたんに、足元のパンフレットの束が鉛のように思える。それって、ここでミスをしたら副社長の顔に泥を塗るってことじゃない。
 
人で賑わう仙台駅で降り、外に出ると、乾いた風がジャケットをはためかせた。東京よりも湿度が低いのか、肌寒い。
 
はじめて降り立った駅は、想像していたよりも広い。きょろきょろあたりを見回す私に、芽衣ちゃんが「先輩、あっちです」とタクシー乗り場を指さした。
 
十分後、たどり着いたアイビーマートの事務所は、巨大な倉庫の一角にあった。作業服を着た五十絡みの男性が、私たちを見て驚いたように目を丸める。

「いやあ、わざわざ来てもらって、悪いね」

「申し訳ありません。本来なら担当営業の瀬戸がお詫びに伺うべきだったのですが」
 
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