溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「あ、いえ。従業員の方の写真がたくさんあるので。仲がよさそうだなと思いまして」
社員イベントなのか、景色の良さそうな場所で大勢が並んでいる写真や、バーベキューを楽しんでいる写真などが壁の一角にびっしりと貼られている。
「ああ、うちはね。商品を買ってくれるお客さんも大事だけど、従業員も大事にしたいから。ときどきああやってみんなで気晴らしに出かけるんだ」
「素敵ですね。大家族みたい」
社長は目尻に皺を寄せた。
「あなたは、瀬戸くんと同じことを言うね」
「え――?」
それから相川社長の瞳からは鋭さがすっかり抜け落ちて、私たちはしばらく談笑した。
瀬戸生吹が現れたのは、十七時を十分ほど回った頃だった。
彼は私たちを見ても驚いた顔一つせず、真っ先に相川社長に頭を下げた。損害には至らなかったのだからと、かえって恐縮する社長に、彼はそれでも頭を下げ続けた。
その姿に私は、私以上に芽衣ちゃんが、大きな衝撃を受けた。