溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
「代わることは……できない、けど」
屋上のへりに立ち、きらめく夜景を背にしている彼の表情から、感情は読みとれない。ただまっすぐ、私を見ている。
「でも、私にできることなら、なんだってやるから」
チームは別だけど、私は営業アシスタントだ。営業マンが働きやすいようにサポートするのが私の役目なのだから。
瀬戸生吹は仕事ができるからこそ、アシスタントに任せるべきところも自分で抱え込んでいるのかもしれない。
彼の今のアシスタントは私の後輩だから、手を貸すこともできるし……なんて考えていたら、カシャンと音がした。
手すりを乗り越えて、彼は屋上に下り立つ。
「じゃあ、俺と付き合ってよ」
「え――」
すたすたと歩を進め、彼は私の正面に立つ。見えていた月が、長身に遮られる。
大きな手にいきなり右手を取られて、心臓が跳ね上がった。