溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
何かの間違いだ――
「西尾さん、ZZマーケットのアポって明日っすよね?」
振り返った瞬間、野村くんの顔が目に入って、私は固まった。染めているのかと見紛うほど色素の薄い髪が、蛍光灯に透かされてますます茶色に見える。
「あと報告書のことなんすけど」
いやいやちょっと待って。君はなぜ今、ここにいるの!?
「野村くん、ZZマーケットとの約束は今日です。私、今朝メールしましたよね?」
頬が引きつるのを感じながら、時計に目をやる。野村くんはつるりとした頬を持ち上げて笑った。白い肌に整った目鼻立ちで、場面が場面じゃなかったら、王子様の微笑みに見えなくもない。
「メール見ましたよ。西尾さん間違えてるし(笑)と思って。だって先週の打ち合わせで明日って決まったし」
「その打ち合わせのあとで日程変更の連絡があったじゃないですか。確認しました?」
「え、だから今、西尾さんに確認――」
それじゃ遅すぎるから!
「あと二十分ですよ! 私、先方に連絡入れるので、今すぐ出てください!」
「え、でも提案書が」
「先週の金曜に渡した書類は?」
「えーと、どこ行ったかな」