溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~
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恋人同士になったのだと自覚したとたん、一緒に暮らすことになるなんて、盆と正月がいっぺんに来るとはこのことだろうか。
あの広い家で暮らしていた瀬戸くんが私の狭いマンションに住めるのかなと心配だったけれど、彼は適応能力が高く、住みはじめて一週間もたたず1LDKの八畳部屋に馴染んでしまった。
育ちがいいとはいっても、さすが営業の泥臭い仕事をこなしているだけのことはある。
「光希、そろそろ寝よう」
「うん」
私がベッドに入ったことを確認してから、彼は電気を消して床に敷いた来客用布団に横になる。
私のベッドはシングルサイズだからふたりで寝るには狭いし、なにより緊張して身体が休まらない。という私の意見を尊重する形で、別々の布団で寝ることを了承してくれた。
部屋の電気が落ちてしばらくすると、瀬戸くんの寝息が聞こえてくる。彼は眠りに入るのが早い。スイッチが切れたように落ちてしまう。きっと疲れているのだ。
視界が暗闇に慣れてくると、私はベッドのなかから彼を見つめた。規則正しく上下する布団の膨らみと整った横顔が、濃淡のある薄闇でうっすらと稜線を描いている。
家の中でずっと母親から締め付けられて育ってきた彼がようやく飛び出した外の世界では、あちこち駆けずり回り他人に頭を下げ、自分をすり減らす毎日なのだ。疲れないほうがおかしい。
家でも会社でも気が抜けなかった彼は、うまくバランスが取れなかったのかもしれない。