溺甘上司と恋人契約!?~御曹司の罠にまんまとハマりました~


並んで改札を抜け、タイミングよくホームに滑り込んできた地下鉄に乗り込んだ。車内はギュウギュウ詰めというほどでもないけれど、通勤客でそれなりに混み合っている。
 
私を手すりに掴まらせると、瀬戸くんは隣でつり革につかまった。正面に座っていたOL風の女性が、携帯をいじるふりをしながら彼を盗み見る。
 
スーツ姿の若い男性というだけで勇ましく見えるのに、背が高いうえに端正な顔立ちの瀬戸くんが、女性の視線を集めないわけがなかった。
 
ちょっとはらはらしてしまう。もしかして、私は分不相応のとんでもない人と付き合い始めちゃったのだろうか。

「俺、今日も帰り遅いから。夕飯は先に食って」

「うん、わかった」
 
瀬戸くんは相変わらず忙しい。朝は一緒に家を出るけれど、遅くても二、三時間の残業で帰る私と違って、彼の帰宅は深夜を回ることもしばしばだ。

身体が心配だけど、瀬戸くんいわく、自宅の自分の部屋よりも私のマンションで寝るほうが質の良い睡眠を取れるらしい。
 
そして私は、そういう彼の何気ないセリフにいちいち喜びを感じてしまうのだ。

「じゃあ光希、あとで」

「うん」
 
JR線に乗り換える際、私たちは違う車両に乗り込む。中小企業で従業員が多くないとはいえ、どこで誰が見ているかわからない。

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