キュンとさせてよ。
『アナタ、誰デスカ』
◇バッドイブニング
「ま、そういうコトだから。」
「あの…ちょっと…」
おっしゃってる意味がよく分かりませんが……
「とりあえず、挨拶代わりにキスでもしとく?」
「……は!?」
首を傾げて悪戯に笑った彼が、私との距離をジリジリと縮めて行く。
10センチ…5センチ…
ああ、このまま私の心臓まで縮まってしまいそう。
「あっ、あっ、あの…」
そう発してみたは良いものの、口を開けて呆然と立ち尽くしてるだけで、私は逃げるという行為さえも忘れてしまっていた。
彼の顔が徐々に近付いて来る。そして……
「もう、後戻りなんて出来ねえよ?」
真っ赤に染まる私の耳元で吐息交じりに呟いた。
そう…時間は30分前に遡る……