キュンとさせてよ。




「新しく隣に引っ越して来た東条(とうじょう)と申します。こんな時間にすみません。」


引っ越しの挨拶に伺いました、と彼は付け足した。


思った通りだ。

今朝、空いていた隣の部屋の前に段ボールが積み重なってたのを見た私の中にあった不信感は、途端に消えていった。


「あっ、はいはい!今開けまーす。」


手に持っていた缶ビールを置いて、カチャっと鍵を開ける。



ーー瞬間、息を呑んだ。


「初めまして。」


Vネックから覗く、セクシーな鎖骨。

襟足や前髪、一見地味に感じる黒髪を見事なまでに遊ばせたお洒落なヘアスタイル。

今にも吸い込まれてしまいそうな切れ長の瞳に、鼻筋の通った鼻。形の綺麗な唇。


男に全く免疫のない私にだって分かる。


これが俗に言う“イケメン”だって事くらい。



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