蛇の囁き
夏休みに入り、進路を実現させるために、朝から夜まで机に向かう日々を送っていた。
この果てしない繰り返しの毎日を積み重ねた先に、自分が望むものが待っているのか。さて、それは本当に最善の選択と言えるものか。
──答えが出ることはなく、将来への漠然とした不安が暗雲のように胸に広がっていく毎日に滅入ってしまいそうだった。
だからこそ、ありとあらゆる不安から、せっつかれるように分毎に管理される日々から解放されたい思いがあった。
私の日常は、流れのない淀んだ小池のようだった。
一方、大河のように膨大な水が穏やかに時間が流れる村は、その願いを叶えるには最適の場所に思えた。
汗を拭いつつ先程来た道の方を見た。炎天下の中、子供達の声はまだ聞こえる。田舎の子供とは元気なものだ。
ジリジリと鳴く蝉の声に、拭ったはずのまた汗が噴き出す思いがした。
ここは滅多に人も来やしないのだ、そう思った私は森の小道に座り込んだ。
徐々に体に篭った熱が抜けていくのを感じる。
この暑さの中では、虫の声もどことなく苦しげに聞こえる。喉の渇きを覚えながらため息をついた。俯いて、逃げるように両手で耳を塞ぐ。胃はまだきりきりと痛んでいる。
今は何も考えずに静かに休みたい。
それなのに、その隙間から虫の声はまるで液体のようにじわりと私の中に染み込んでくる。
全ての不安を締め出すように、私は目をつむり、膝に顔を埋めた。