君に溺れた
side~三石哲哉~
真凛から話がしたいと連絡があった。

仕事を早々に切り上げて、いつものホテルに向かう。

ホテルに着くと、オーナーが慌てた様子で声をかけてきた。

妻と息子がたまたま食事に来たようだが、勘のいい妻が真凛の存在に気づいたようだ。

オーナーは深々と頭を下げた。

オーナーに軽く返事をしていつも食事に使う個室に入った。

個室に入ると真凛が妻に詰め寄られ水をかけられたようだ。

慌てて真凛に近づき、ハンカチを差し出す。

オーナーも従業員に指示している。

「真凛、すまない。着替えを準備させるから、少し待っててくれ。」

「・・・はい。」

真凛をオーナーに任せる。

妻と息子を交互にみた。

妻は真凛を娘と聞いて、愕然としている。

竜哉は真凛の背中を目で追っている。

俺は椅子に座るよう二人を促す。

真凛のことをすべて話した。

真凛の母、すみれのことも。

妻は泣きながら話を聞いていた。

「二人とも黙っていてすまない。今日真凛と話して二人と会わせる日を決めるつもりだった。」

「・・・」

「真凛は、来月結婚する。式には私も参加するつもりだ。真凛は母親を早くに亡くしてとても苦労してきた。だから、結婚して幸せになってほしい。私に出来ることは何でもやってあげるつもりだ。二人とも真凛を家族と思うようにとは言わない。だが、真凛を今日みたいに傷つけるのは絶対に許さない。」

「あなた、式に出るって言うけど、世間体もあるわ。出るのは、今後に支障が出ると思うわ。」

「お前は何も心配しなくていい。」

「でも、」

「式には出席する。これ以上、話すことはない。食事をするつもりで来たんだろう?準備させるから食べて行きなさい。」

「あなたは?」

「真凛は妊娠してるんだ。風邪でも引いてお腹の子に何かあったら婚約者に申し訳ない。真凛の様子を見に行ってくるから、食事してるんだ。」

「親父。」

「?なんだ?」

「俺も行く。」

「どうして?真凛と面識があるのか?」

「あぁ、入院したとき世話になった。話したい。俺も行っていいだろ?」

「好きにしなさい。」

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