君に溺れた

今日は一ノ瀬さんと待ち合わせの日。

どうしよう。

一ノ瀬さんに会うのはお母さんの所持品を取りに行った日以来だ。

一ノ瀬さんは、スラッとした細身のシーツを完璧に着こなす大人の男性。

前に会ったときは、なんだかいい匂いがした。

私、大丈夫かな。

臭くないかな。

あーどうしよう。

緊張してきた。

うまく説明できるかな。

「宮島さん。待たせたね。」

「あっ。はい。大丈夫です。今日はわざわざありがとうございます。」

「いや。大丈夫だよ。あそこのカフェに入ろうか。」

「はい。」

一ノ瀬さん、私服も素敵だな。

スカイブルーのカーディガンに白のシャツ。黒い細身のパンツがとてもよく似合ってる。

警察署で会ったときは髪をしっかりセットしてたけど、今は前髪を下ろしていて爽やかな印象。

周りの女性が一ノ瀬さんをちらちら盗み見てる。

一ノ瀬さんは、気づいてないのか黙々とカフェに向かって歩いてる。

こんな素敵な男性が好きになる人ってどんな人かな？

きっと綺麗な大人の女性だよね。

・・・。

せめてスカートにすればよかったかな。

とても隣を歩けない。

「？宮島さん？」

「あっ。はい、すみません。」

「大丈夫？ちゃんとご飯食べてる？」

「はい、大丈夫です。」

「そう。前より痩せたみたいだから。」

「ははっ。大丈夫です。昔からチビで友達にマッチ棒だってよくからかわれましたから。前なのか後ろなのかわからないって。ははっ。すみません。こんな自虐、聞かされても面白くないですよね。」

「自虐か。僕にも笑える自虐ネタがあるよ。とても聞かせてあげれないけど。君はまだ成長途中なんだよ。気にすることない。」

「・・・（照） ありがとうございます。」

「それで、相談っていうのは？」

私は今置かれている状況を話した。

一ノ瀬さんは、私の話を真剣に聞いてくれた。

知り合いの弁護士を紹介してくれると約束してくれた。

私は安堵で思わず表情が緩んでしまった。

こんな安心して話ができたのは久しぶりだ。

叔父さんの家に居候してるからいつも気を張ってたし、友達にもしばらく会ってない。

こんな風に笑ったの本当に久しぶり。

一ノ瀬さんに相談してよかった。