君に溺れた
一ノ瀬さんに相談した数日後、和島さんという弁護士さんから連絡が来た。

和島さんは、叔父さんと何回か会って話をしてくれた。

和島さんからは、叔父さんの借金が多額でサラ金からも借りていること。

このまま叔父さんの家に居候しているのは危険だから家を出た方がいいとアドバイスしてくれた。

叔父さんに知られないように準備をしていたが、勘のいい叔父さんの奥さんに知られてしまった。

叔父さんはそれから私を家から出してくれなくなった。

和島さんや一ノ瀬さんにも連絡できなくなった。

常に叔父さんの奥さんに見張られている。

夜中、叔父さん夫婦が私を風俗に売り渡す話をしていた。

このままじゃいけない。

私は必死に叔父さんの家を飛び出した。

携帯やお財布、お母さんとの思い出の品も持っていくことが出来なかった。

ズボンのポケットに一ノ瀬さんの名刺が入っていた。

私はすがるような思いで警察署に行った。

一ノ瀬さんに会いたいと取り次いでもらった。

でも一ノ瀬さんには会えなかった。

一ノ瀬さんの伝言を母の事件のときにもお世話になった婦警さんが伝えてくれた。

「一ノ瀬係長は、会議中で会えないとのことです。」

「何時に終わりますか?」

「わかりません。一ノ瀬係長からあなたのことは聞いています。可哀想だから名刺を渡したけど、これ以上付きまとわれるのは迷惑だと言ってました。一ノ瀬係長の彼女は私です。これ以上彼に付きまとって彼のキャリアに傷をつけないで。」

「・・・っ。わかりました。これはお返しします。無理を言ってすみませんでした。」
< 13 / 112 >

この作品をシェア

pagetop