君に溺れた
side~涼~
夕方、今日予定していたオペが終わってこれからカルテを書こうとしていたとき、母親から電話があった。

真凛が手紙を残して家を出たと、取り乱しながら話した。

「何で真凛が家を出たんだよ!?」

「そんなのわからないよ。手紙には迷惑かけたくないって書いてあるだけで、それ以上は何もわからないよ。」

母親はひどく取り乱しているようだった。

それもそうだろう。

真凛を本当の娘のように可愛がっていた。

母親はシングルマザーで俺を医大に通わせてくれた。

毎日必死に働いて稼いだお金で俺は医大に通えてこうして医者になれた。

最近は俺が仕事で忙しくて夜、さみしいとぼやいているのを知ってた。

だから、真凛の存在は俺たち親子にとって有難いものだった。

真凛は素直で、可愛い。

天性の愛されキャラだ。

仕事から疲れて帰ると真凛が夕食を準備して待っててくれた。

真凛の笑顔を見ながら食べる食事は本当に幸せだった。

ずっとうちにいてくれればいいと思っていた。

夜、家に帰ると母親が呆然と手紙を見つめている。

手紙には二人には本当にお世話になって感謝していること、必ず恩返しすると書かれていた。

「恩返しするって、行くところもないのにどうするつもりなんだろう。本当にバカな子だよ。大丈夫って馬鹿みたいに繰り返して、辛いのにいつも笑顔で。全く、何で・・・うっうぅ。本当に薄情な子だよ。」

「・・・何か事情があったのかもしれない。近所の人は何か言ってなかった?」

「別に何も言ってないさ。」

「そっかぁ。俺、ちょっと楓のところに行ってくるよ。」

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