君に溺れた
1つになる時
彼女と再会したが、あれから1週間彼女からは一切連絡は来なかった。

いても経ってもいられず、彼女に渡した携帯に電話した。

「もしもし?」

「もしもし。一ノ瀬です。急に申し訳ない。」

「いえ、大丈夫です。」

「よければ、食事に行かないか?話もしたい。」

「・・・今からですか?」

「あぁ。無理なら明日でも構わない。」

「バイトを掛け持ちしていて、食事は無理だと思います。」

「そうか。僕に出来ることがあったら言ってほしい。力になりたい。」

「・・・ありがとうございます。でも一ノ瀬さんに迷惑かける訳にはいきませんので、お気持ちだけで十分です。」

「わかった。いつでも連絡してくれていいから。無理しないように。」

「はい。」

迷惑か・・・。

俺が会いたかっただけだ。

彼女の役に立ちたいなんてよく言えたよな。

17歳で誰にも頼らず生きていくなんてできるわけない。

俺はいけない行為だと思ったが、翌日彼女のことを調べた。

彼女は朝3時から新聞配達のバイトをして、6時からはビルの清掃、それが終わるとコンビニやファミレスのバイトを交互に行っていた。

1日も休まず、毎日繰り返し繰り返し働き続けている。

彼女が住んでいるアパートは、海外からの移住者が多く集まる区域だった。

きっと正規の手続きはしていないだろう。

風俗で働く女性が多い地域で、何度か不法滞在で逮捕した人が住んでいた地域だ。

どうしてここに行き着いたのかわからないが、彼女はここに馴染んでいる様子だった。

今日はコンビニのバイトをしていて、もうすぐ終わるはずだ。

彼女が出てくるのを待った。

1時間後、彼女が店から出てきた。

「宮島さん。」

「一ノ瀬さん?どうして?」

「心配で様子を見に来た。車で送るよ。」

「でも・・・駅まですぐですし、大丈夫です。」

「1年前、君が失踪してから君がどうやって暮らしていたのか、教えてくれないか?どうして僕に連絡をくれなかったのか。理由を知りたい。」

「!?それは・・・一ノ瀬さんが迷惑だと・・・」

「僕が?迷惑だなんて言った覚えはないけど。」

「あの・・・婦警さんが一ノ瀬さんの伝言を教えてくれて・・・」

「・・・何か行き違いがあったみたいだ。僕は君のことを迷惑だと思ったことはないよ。」

「・・・本当ですか?」

「あぁ、じゃなきゃ1年間探したりしない。」

「心配かけてすみません。くしゅん。」

「夜は冷えるから車に乗って。」

「でも・・・」

「何も怖がることない。君が嫌なことは絶対にしないから。」

「いや、そうじゃなくて。その・・・」

「?」

「私、2日間お風呂入れてなくて汚ないので、こんな高そうな車には乗れません。それじゃあ。」

「待って!」

とっさに彼女の手を掴んで握った。

なんて小さい手首なんだ。

強く握ったら折れてしまいそうだ。

「・・・一ノ瀬さん?」

「あっごめん。」

「いえ。私、明日も早いので失礼します。」

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