君に溺れた
和島に指定されたホテルのバーに行くと、和島はすでにブランデーを飲みながら女性と話をしていた。

「よぉー。遅かったな。」

「悪いな。」

「和島さん、こちらは?」

「あぁ、友人の一ノ瀬。悪いけどこれから二人で話すから帰ってくれる?」

「えー?一緒に呑みましょうよ。ね。一ノ瀬さんもいいですよね?」

そう言いながら一人の女性が近づいてきたので、咄嗟に持っていたカバンで自分をガードした。

女性は俺の態度に不快感をあらわにして怒りだした。

すかさず和島が仲介に入る。

学生時代、何度もやったやりとりだから、お互い言葉はなく、実にスマートな対応をしてくれる。

「悪いな。」

「別にいいさ。お前と飲むのに、女は必要ない。それで、相談って?」

「実は・・・」

俺は和島に、真凛と再会したこと、再会して自分の気持ちを真凛に伝えたいがどうするべきか、相談した。

「大地、お前、本気か?相手は未成年だぞ。へたしたら、お前犯罪者になるぞ。」

「・・・そうならないために、どうしたらいいかお前に相談してる。」

「大地、本気なんだな。」

「あぁ、今まで女性の手も握ったことないのに、自分から引き留めるなんて、尋常じゃない。彼女と会ってると動悸がして自分をセーブできない。」

「ははっ。こりゃぁ重症だな。」

「笑うなよ。こっちは、中学からの女性遍歴を克服できるかどうかなんだから。」

「だったら話は必要ない。彼女の気持ちを確かめるしかないだろ?今から行こう。」

和島はそう言って笑った。

そんな簡単なことか?

「そんな簡単な問題じゃないと思うが。車に乗るのも拒否されてる。」

「・・・彼女さ、何で車に乗るのを拒んだか言ってたか?」

「理由は2日間お風呂に入ってないから臭いって。」

「それって捉え方を少し変えれば、お前には臭いと思われたくないってことだろ?可愛い話だと思うけど。お前は知らないだろうけど、大抵の女はセックスする前にお風呂に入りたいと言ってくるよ。」

「・・・俺は彼女を送るつもりだけだったんだ。」

「送るつもりねぇー・・・手を握っただけで反応しちゃう今のお前は、男子中学生より危険だと思うぞ。」

「うるさい。」

「まぁとりあえず彼女の気持ちを確かめに行こう。」

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