君に溺れた
和島と一緒に彼女の住んでいるアパートまで来た。

部屋の呼び鈴を押すと外国人の女の子がドアを開けた。

「どなたですか?」

「宮島真凛さんは居ますか?」

「・・・まりんならまだ帰ってない。あんたら誰?」

「僕らは彼女をずっと探していた者だよ。よければ、彼女の居場所を教えてくれないか?」

「・・・今日はコンビニのバイトのあと梅さんのところに行くって言ってた。」

「梅さん?」

「時々私たちの面倒を見てくれる人。まりんは梅さんに拾われてここに住むようになった。」

「梅さんは今どこにいるかな?」

「・・・あんたら悪い人?」

「違うよ。彼女を助けたいんだ。」

「・・・○○公園にいると思うけど。」

「ありがとう。」

公園に行くと彼女は50代ぐらいの女性と話をしていた。

近くまで行くと二人の会話が聞こえてきた。

「真凛、今日はなんだか元気がないね。」

「そんなことないよ。・・・ただ、今日昔お世話になった人が会いに来てくれたんです。」

「そうか。」

「その人は警察官で、とても優しくて素敵な人なんです。・・・彼の隣を歩いたらいけない気がして。私は髪もぼさぼさ、服もヨレヨレのものしかない。お風呂も入ってなくて。車で送るって言ってくれたのに、逃げるように彼と別れてしまって。」

「送ってもらえばよかったのに。」

「・・・1年前、彼に助けを求めに警察署に行ったとき、もう付きまとわないでほしいって彼の彼女さんに言われて。あんな綺麗な彼女さんが座ってる助手席に私が乗ったらいけない気がして。」

「真凛、あんたは普段底抜けに明るく振る舞ってるのに、肝心な時に尻込みするね。あんたを心配してくれてる人なんだろう?何で素直に甘えないのさ。いくらあんたが頑張ってもあんたはまだ17歳なんだ。甘えていいんだ。」

「・・・一度甘え癖がつくと一人で生きていくのが辛くなるからいや。梅さん、私ね。1年前、公園で寝泊まりしてたの。行くところがなくて、頼れる人もいなくて、2週間何も食べてなくて意識が朦朧としてる中でこのまま死のうと思った。でも、優しい人達が私を助けてくれて思い出させてくれたの。お母さんのことを。お母さんは、私をストーカーしてた男に殺された。お母さんが生きれた分も私は生きなきゃいけない。お母さんはね、いつかお父さんが私たちを迎えに来てくれるって言ってた。だから、私はお母さんのためにもお父さんを待たなきゃいけない。」

「そうか。真凛、あんたは立派だよ。」

「あと、お金を貯めて20歳になったら、精一杯お洒落して一ノ瀬さんに会いたい。胸を張って隣を歩けるようになりたい。」

「その一ノ瀬って人のことが好きなんだね。」

「!!梅さん、このことは私と梅さんの秘密にしてね。」

「わかったよ。さぁー明日も働くよ。帰って寝な。」


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