君に溺れた
彼女が公園を出て、アパートに向かって歩きだした。

俺は状況を把握するのに時間がかかった。

彼女は俺のことが、好き?

聞き間違えじゃないよな。

「大地・・・大地!!」

「!!なんだよ。」

「なんだよじゃねーよ。真凛ちゃん、行っちゃうぞ。」

「あぁ、今日はやっぱり帰る。」

「なんだよ。真凛ちゃんの愛の告白を聞いてびびってんのか?俺だったら、すぐにでも追いかけて自分のところに連れ込むけど。」

「・・・今彼女を連れ込んだら俺は彼女に何するかわからん。危険な気がする。」

「お前は本当に真面目なやつだな。昔、俺が伝授したことを実践すれば間違いなくいける。臆するな。」

「簡単に言うな。そんなに簡単なことなら30歳になるまでこじらせてない。」

「あぁ、そうか。お前がいかないなら、俺が行くよ。あそこは不法滞在者のたまり場だ。悪い噂もある。あそこに置いてはおけない。じゃあな。」

「・・・彼女は俺のところに連れてく。」

「ふっ。最初からぐだぐだ言わずにそうすればいいんだよ。」

俺と和島はもう一度彼女のアパートに向かった。

「?なんか騒がしくないか?」

「あぁ、パトカーが来てる。」

俺は顔馴染みの警官に事情を聞いた。

今日一斉のガサ入れをしたらしい。

不法滞在者をこれから連行していくと警官は話した。

俺は急いで真凛に電話した。

「・・・もしもし?」

「もしもし?大丈夫か?今どこにいる?」

「・・・○○公園にいます。」

「すぐに迎えに行くからそこを動くな。」

「大地、向こうでタクシー捕まえとくから、急いで迎えに行ってやれ。」

「あぁ、悪いな。」

公園に着くと彼女は遊具の中で泣いていた。

「宮島さん。」

「一ノ瀬さん、私何もしてないです。」

「あぁ、わかってる。宮島さんを捕まえにきたんじゃない。」

「あのタニは?ニーシャも。」

「たぶん、連行された。一斉のガサ入れだったんだ。違法な店で働いていたようだ。」

「そんな・・・うぅっ。ひっく。」

「宮島さん、とにかくここを離れよう。」

彼女はいきなり住まいを奪われて動揺していた。

和島が待機させてくれたタクシーに彼女を乗せる。

「真凛ちゃん、久しぶりだね。こうしてまた会えてうれしいよ。」

「和島さん、ありがとうございます。」

彼女をタクシーに乗せると和島が耳打ちしてきた。

「大地、焦るな。お前なら大丈夫だ。」

そう言って俺のスーツの内ポケットに避妊具を入れた。

「こんなの必要ない。」

「そんなのわからないだろ。」

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