君に溺れた
タクシーの運転手に行き先を告げる。

横に座る彼女が気を張っているのがわかる。

タクシーは俺のマンションに到着した。

俺は金を支払いタクシーを降りる。

彼女もタクシーを降りる。

俺はエントランスに向かうが彼女はついてこない。

「宮島さん?」

「あの・・・私、帰ります。」

「帰るってどこに?」

「あの・・・知り合いのうちに泊めてもらいます。」

「知り合いの家か。それは困る。」

「どうしてですか?」

「君を帰したくない。」

「・・・彼女がいるのに、どうしてですか?」

「俺に彼女はいない。」

「うそ。だってあの婦警さんが自分が彼女だって。」

「宮島さん、大人は時々嘘をつく。彼女がどうしてそんな嘘を言ったのかわからないが、僕に彼女はいない。」

「そうなんですか。」

「入って。君が嫌がることはしないから。」

彼女は心を決めたようで後ろをついてきた。

エントランスからエレベーターに。

彼女は不自然なほど僕と距離を置いている。

和島が言ってた。

女性は僕らが創造できない突拍子のないことを考えてるって。

君は今何を考えてる?

部屋に入ると彼女は所在なさげに縮こまっている。

彼女のためにお風呂を準備した。

「中のもの、好きに使っていい。俺の服で悪いけど、使って。」

「あっはい。」

彼女はぎこちない返事をして浴室に向かった。

彼女が浴室に入り、シャワーの音が聞こえてきた。

俺は彼女の服をコンシェルジュに頼んでクリーニングを依頼した。

コンシェルジュは、和島からの荷物を一緒に持ってきた。

大きな袋には女性が使う身の回りのものが入っていた。

中には下着も入っていた。

「もしもし?」

「大地か?荷物届いた?」

「あぁ、今確認した。」

「俺の目が衰えてなかったら、下着のサイズはバッチリのはずだから。」

「お前、すごい特技を持ってるな。」

「ははっ。お前もそうなるよ。彼女をいっぱい愛してやれ。彼女が不安に思うことがなくなるぐらい。」

「あぁ、色々ありがとうな。」

「気にするな。」





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