君に溺れた
俺からの相談を友人は信じられないといった表情で聞いていた。

「お前、病気治ったの?」

「俺は病気じゃない。」

「じゃあ、童て・・」

「それ以上言ったら帰る。」

「わかった、わかった。もう言わない。」

「・・・俺も自分の行動に戸惑ってる。でも彼女に対してしていることは半分以上奉仕の気持ちだ。」

「わかった。力になるよ。進捗はその都度するから、安心して任せてくれ。」

「助かる。」

友人に任せて2週間が経った。

友人からは逐一進捗状況の連絡があったが、やや難航している様子だった。

叔父さんの借金が思いのほか多いことや、彼女が未成年ということで叔父さんに分があるようだ。

なんとか彼女の希望する勉強が続けられる環境を維持することができればいいのだが。

母親を亡くし、それでも生きていこうとしている彼女をこれ以上苦しめないでくれ。

それだけを願いながら吉報を待っていた。

でも事態は最悪の状況へ進んでしまった。

友人に弁護を依頼して2週間後、公衆電話から着信があった。

俺は会議中で電話に出ることができなかった。

夜、友人から連絡がきて彼女が失踪したことを聞いて愕然とした。

友人の話では、借金のある叔父夫婦が弁護士の介入をよく思わず、身元引受人であることをいいことに強引に話を進めたようだ。

彼女は高校も退学させられ、サラ金業者からヘルスに売られそうになり失踪してしまった。

友人のところにも公衆電話から連絡があったようだが出られなかったみたいで、彼女が今どこにいるのかわからなかった。

叔父夫婦のところに友人と乗り込んでいったが、知らないの一点張りで話にならなかった。

俺たちが帰ったあと、家の中では喧嘩が始まった。

「お前があいつをしっかり監視してないからこんなことになるんだ!!」

「元々はあんたがギャンブルで借金したのが悪いんでしょ!?」

「あぁくそっ。あいつ見た目だけは母親に似てよかったからな。それに16にしては肉付きもよかった。写真を見せたら500万前払いでもいいっていう業者がいたんだ。」

「ふん、若いってのは得だね。私もあと20年若かったらよかったよ。」

「ふん、お前とあいつじゃ月とスッポンだな。あいつはいい女になるぞ。なんせ母親は銀座の会員制クラブのナンバー1だったんだ。どっかの金持ちの男の子供らしいが、あいつ絶対父親の名前を言わなかったからな。まぁ認知もしてもらってないぐらいだからどうしようもないが、脅すことぐらいできたかもしれないのに。お前、本当にあいつが行きそうなところ知らないのか?」

「知らないよ。携帯も財布も持たずに飛び出して行ったんだから。どうやって生きてくか知らないけど、あの子も母親に似て案外したたかだよ。あんな警察のお偉いさんと弁護士まで味方につけてさ。体、売ってんじゃないのかい。」

叔父夫婦の話を聞いて久しぶりに吐き気がした。

友人も不快感を露わにしていた。

失踪届を出して捜索をしたかったが、身内が届を出さなければ警察は動けない。

叔父夫婦は首を縦に振らず俺たちは帰るしかなかった。

「大地、知り合いの探偵を雇って探してもらう。すぐ見つかるはずだ。」

「あぁ頼む。」

「俺、なんでお前があの子に関わるのかわかったよ。何度か会って話したけど、物静かだけど礼儀正しくて、何より意志の強さがある。惹かれる気持ちわかるよ。絶対見つけてあげよう。」

「あぁ。絶対見つける。」

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