君に溺れた
披露宴の中盤、新婦が一旦退場していた。

栗田はかなり気分がいいようで、いつも以上に俺たちに絡んできた。

「よーよー大地楽しんでるか?」

「・・・あぁ。」

「全くお前は中学からつれないやつだな。もう少し愛想よく出来ないのか?」

「お前に振る舞う愛想はない。」

「ったく、お前は素直じゃないよな。昔から。そんなことじゃあ一生結婚できないぞ。」

「・・・お前に心配してもらうなんて、俺もおしまいだな。」

「なんだよ。今日はお前のためにうちの美女ナースと同じ席にしてやったんだぞ。」

「・・・」

「どうだ?気になる子いるか?」

「・・・」

「ったく、お前は昔から女性のことになると余計愛想がないなぁ。」

「・・・」

「栗田、その辺にしとけ。」

「和島だって、そう思うだろ。俺はただ心配してるんだよ。何年か前、すごく荒れてた時期があっただろ。」

「・・・」

「栗田、今日はお前のめでたい日なんだ。他の主賓に挨拶しなくていいのか?」

「おーそうだ。部長に挨拶挨拶。じゃあこのあとも楽しんでくれ。」

「あぁ、お前も。」

和島がいてくれて助かった。

真凛や他の女の子からの視線が痛い。

俺は和島を誘って喫煙ルームへ。

「いつも悪いな。」

「ん?気にするなよ。それより、今日真凛ちゃんと再会するとは思わなかったな。」

「・・・真凛、元気そうだったな。周りとも親しい様子だった。俺だけ置いていかれたみたいだ。」

和島はライターに火をつけながら話を聞いていた。

「俺は真凛ちゃんがお前を置いていってるようには見えないけど?やっとお前と対等な位置まで来た。真凛ちゃんがお前に送る視線は6年前と変わってないと思うけどな。」

「・・・男がいた。」

「お前も嫉妬するんだな。」

「!?」

「あの男は確かに俺たちも知らない真凛ちゃんを知ってるのかも。男は明らかに真凛ちゃんを溺愛してるみたいだったしな。」

「・・・和島、俺はどうすればいいと思う?真凛は俺のことを忘れて前に進もうとしてる。邪魔しないほうがいいのか?」

「お前はそれでいいわけ?想像しろよ。あの佐藤って医者に真凛を盗られてもいいの?自分を欺くなよ。昔言っただろ。本能のままいけって。」

「・・・和島」

「良くても悪くても今日が再スタートだ。大地、気持ちぶつけてこうぜ。」

「あぁ。」

会場に戻ると披露宴は終盤を迎えていた。



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