君に溺れた
「宮島さん、二次会どうする?」

「私は今日は帰ります。少し飲みすぎたみたいです。」

「そう?わかった。」

「栗田先生と実花にお幸せにって伝えて下さい。」

「オッケー。お疲れ様。」

「お先に失礼します。」

真凛が出口に向かう。

俺は後を追う。

和島が「頑張れ」と背中を押してくれた気がする。

エレベーターを待つ真凛を見つける。

扉が閉まりかけたとき、俺は無理やり閉まりかけたドアを開けて真凛と中に入る。

『閉』ボタンを押してエレベーターの奥に入る。

真凛は、戸惑っている様子だった。

廊下から真凛を呼ぶ男の声が聞こえた。

真凛は男をみて、閉まりかけたドアを開けようとしたので咄嗟に真凛の腕を握った。

真凛は俺とあの男、どちらを選ぶ!?

俺は、真凛の腕を離し真凛の動きを見守る。

真凛、行くな。

心でそう願ったけど、正直自信がなかった。

目を閉じて待つ。

たった数秒のことだが、すごく長く感じる。

真凛は、『閉』ボタンを押した。

扉が完全に閉まると俺と向き合い、上目使い。

この顔は真凛がキスをせがむときの表情だ。

俺は真凛の腰を抱き、顎を引き寄せる。

真凛は、目を閉じて俺の唇を待っている。

俺は真凛の唇に自分の唇を重ねた。

6年ぶりの真凛の唇はやっぱり柔らかくて艶があった。

ほんの数秒触れるだけのキスをして唇を離すと、真凛が上目使いで見ている。

俺の唇についたピンクのグロスを親指で拭き取る。

「ごめんなさい。グロスがつい・・・」

俺は真凛の親指を口に含めた。

グロスを舐めとり真凛の反応を待つ。

「今夜、俺に抱かれる覚悟があるならついてきて。」

エレベーターが止まりタクシーをつかまえる。

真凛は俺の後ろをついてきた。

一緒にタクシーに乗る。

「真凛の家に行く。」

「あ・・・はい。」

真凛は運転手に行き先を告げる。

車内ではお互い何も話さなかった。

真凛の住むマンションに着いた。

俺は支払いをして、タクシーを降りる。

真凛は、俺が何も話さないので少し戸惑いながらも部屋に案内した。
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