君に溺れた
「野宿なんてしませんよ。今日は友達の所に行こうと思ってて。」

「君がいくら努力しようとしても限界がある。君には住まいを用意するから安心しなさい。明日、認知の手続きをして、学校にも通えるようにする。」

「本当ですか?」

「あぁ、今まで父親の役割を果たせなかった。今日からは思う存分、私に甘えてほしい。」

私は、三石さんの用意してくれたホテルにしばらく滞在することになった。

次の日、改めて認知の手続きをしてくれた。

「今日から君のことを真凛と呼んでもいいかな?私のことは好きに呼んでくれて構わない。」

「じゃあお父さんで、お願いします。」

「・・・お父さんと呼んでくれるのか?」

「はい。お母さんが昔からお父さんお父さんと呼んでいたので、私もお父さんって呼ぶ方が馴染みがあるので。お父さんは嫌ですか?」

「嫌なわけないよ。大歓迎だ。なんだか照れるなぁ。」

お母さんが言ってた通りだ。

笑うと目尻が下がって可愛いってよく言ってた。

「?真凛?どうかしたか?」

「いえ、何でもないです。」

「そうか。じゃあ今後の話をしよう。真凛は今後どうしていきたい?」

私はお父さんに高校に通いたいこと、できれば東京以外で寮などの設備がある高校を受験したいことを伝えた。

お父さんはなぜ東京以外がいいのか気にしていたけど、深く詮索はしてこなかった。

4月、私はなんとか、全寮制の高校の2年に入学することができた。

お父さんとは、月に1~2回しか会えないけど、会うたびにお母さんとの思い出話をたくさん聞かせてくれた。

お母さんが言ってた通り、甘党で私がお母さん直伝のプリンを作ってあげると、懐かしいと言って6個を一度に食べてくれた。

私は無事に高校を卒業して、看護大学に進学。

今年から都内の病院で働いていた。
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