君に溺れた
side~涼~
明日は真凛の23歳の誕生日だ。

俺はジュエリーショップでピンキーリングを買った。

明日、真凛に告白しようと考えていた。

真凛は俺を兄のように慕ってくれている。

だから1年前に真凛と病院で再会したとき焦る必要はないと思っていた。

けど、2週間前、栗田先生の結婚式のあとから真凛の様子が変わった。

今まではお洒落には無縁でいつもTシャツとジーパンというシンプルなスタイルだったのに、最近はスカートを履いたり、化粧もしている。

母親とよく食事をしているが、母親が、真凛に彼氏が出来たんじゃないかと電話してくるぐらいだ。

彼氏・・・

思い当たる出来事がある。

栗田先生の結婚式、真凛は二次会には行かなかった。

俺も真凛を送っていくつもりだったから、披露宴のあと真凛を探した。

真凛はもう席にいなくて慌ててエレベーターに向かう。

真凛がエレベーターに入ったのをみて呼んだ。

しかし、真凛がエレベーターを出ようとして足を動かしたら、後ろに乗っていた男が真凛の腕を掴んだ。

真凛はそのあと、俺と目を合わせることなく『閉』ボタンを押したようだ。

扉が閉まる直前、真凛が男に抱きついたように見えた。

俺は次のエレベーターでロビーに向かったが真凛の姿はなかった。

あれからだ。

真凛が母親と食事する時間がないと言い出し、女の子らしい服装をして、化粧もするようになった。

俺は真凛と同じ病院で働いているが、真凛は新人で一生懸命仕事を覚えようとしているところだ。

なかなか食事にも誘えなかった。

だから明日の真凛の誕生日に俺は懸けていた。


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