君に溺れた
車を5分ほど走らせ公園の駐車場に停めた。

真凛を見るとまだ震えている。

真凛の様子からキスをされたんだろう。

口紅がはがれ、真凛は口元をずっと手で押さえている。

「真凛、大丈夫?」

「・・・大丈夫です。もう少しで落ち着くと思うので行きましょう。」

「・・・今日はやめよう。家まで送る。」

「嫌!私、今日楽しみにしてたんです。大地さんの大切な友達に会いたいです。行きます。」

「・・・」

「大地さん」

「今日はやめよう。真凛、自分の姿を鏡でみるといい。俺を通してアイツを思い出されるのは、正直つらい。」

「ふぇん。ん。大地さん、ごめんなさい。」

「家まで送る。泣かないで。」

真凛のマンションに着いた。

真凛は車を降りようとしない。

「真凛、着いたよ。行こう。」

「・・・」

「真凛。また日を改めて紹介するよ。ねっ?」

「・・・わかりました。」

真凛がマンションに入るのを確認してから俺は車を発進させた。

真凛、ごめん。

俺だってこの日をすごく楽しみにしてたんだ。

初めての彼女を友人に紹介したかった。

真凛を自慢したかった。

でもしょうがないだろ?

男に無理矢理キスされて、思いっきり噛んだんだろう。

自分の唇も、切れていることに気づいていない。

首筋にも、キスマークがあった。

あんな目立つところに付けられて、友人に突っ込まれたら笑って返す余裕ない。

だから今日は無理なんだ。

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