君に溺れた
彼女との再会は突然だった。
母親の命日を彼女が忘れるはずない。
そう思って仕事を休み、朝から彼女の母親が眠る墓の前で待った。
お墓に手を合わせ、母親に誓った。
「もし彼女が僕を受け入れてくれるのであれば、絶対に幸せにします。だからお願いします。彼女ともう一度会わせてください。」
自分が心底おかしくなる。
数回しか会ったことがない女の子にここまで執着している。
でも頭から離れない。
彼女の笑顔をみた瞬間、俺は彼女に恋をした。
女性に触れられるだけど、吐いてしまう俺が人を恋しいと思った。
車の中でひたすら待った。
朝から待って、時刻は16時になろうとしている。
朝から何も食べてないからコンビニでおにぎりを買った。
隣のレジで男が店員を口説いていた。
まだ大学生ぐらいの男。
「ねぇ、頼むよ。前から可愛いなぁって思ってたんだ。」
「ごめんなさい。」
「そんなこと言わないでよ。」
「困ります。」
「・・・本当にだめ?」
「ごめんなさい。」
「わかった。今日は諦める。また来るから考えておいてね。」
すぐに彼女だとわかった。
化粧もしてないし、コンビニの制服にジーパン姿だけど、間違いない。
どうしよう。
ここで声をかけていいものか?
仕事終わりに声をかけよう。
一旦車に戻って仕事が終わるのを待った。
20時、彼女がコンビニの制服を脱いで出てきた。
車を降りて彼女に声をかけようとした瞬間、さっきの大学生ぐらいの男が一歩さきに彼女に声をかけた。
「仕事終わった?」
「あの・・・」
「待ってたんだ。どうしてももう少し話がしたくて。ねーいいでしょ?」
「私、困ります。」
「食事奢るからさ!ねっ?」
「大丈夫です。本当に困ります。」
「そんなこと言わないでよー。4時間も待ってたんだよ。ねっ?お願い。」
男が彼女の腕を掴み、車に向かって歩きだした。
俺は無意識に彼女の反対の腕を掴んだ。
「真凛、迎えに来た。帰ろう。」
「えっ?」
彼女が俺をみて目を見開いた。
「一ノ瀬さん、どうしてここに?」
「あんた誰?」
「お前こそ誰だ?真凛の腕をいい加減離せ。」
俺は真凛の肩を抱いて自分の車の助手席に乗せた。
男は呆気に取られている様子だったが、気にせず車を走らせた。
しばらくお互い無言だった。
お墓の近くの路肩に車を停めた。
「・・・」
「・・・」
「あの・」
「ごめん。余計なことしちゃったかな?困ってるように見えたから助けたけど。」
「いえ、助かりました。ありがとうございます。」
「なら、よかった。」
「一ノ瀬さん、どうしてあのコンビニに?」
「・・今日お母さんの命日だったでしょ?」
「覚えてくれたんですか?」
「あぁ、1年前君からの電話に出なかったことを心底後悔したよ。あの時電話に出れていたら君を助けることが出来たはずだ。」
「ありがとうございます。そんな風に思っていただいてうれしいです。」
「1年、必死に探したんだ。やっと見つけた。」
「・・・ありがとうございます。」
「お母さんのお墓行かないの?」
「朝、新聞配達のバイトをしてて、そのときにお母さんには会いに行きました。」
「そっかぁ。何時に行ったの?」
「3時です。」
「3時?ははっ。そんなに早く行ったんだ。じゃあ待ってても会えないよね。」
「お金がなくてお花を買えなくて。申し訳なくて。」
「気にしないで。花なら僕が持っていったから。今どこに住んでるの?送るよ。」
「ありがとうございます。駅で大丈夫です。」
「家まで送るよ。」
「少し距離がありますから大丈夫です。」
「遠慮しないで。どこ?」
彼女は少し悩んだ末、住んでるところを教えてくれた。
「この辺で大丈夫です。」
「わかった。」
俺が車を路肩に停めてシートベルトを外して体を傾けると彼女は俺から不自然に距離を置いた。
「どうかした?」
「いえ、なんでもないです。」
「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。」
「違います。一ノ瀬さんを警戒してるんじゃなくて、私、昨日からお風呂に入ってないので臭いと不快かなって思って。」
「そんなことないよ。家にお風呂ないの?」
「お風呂は週3回銭湯に行ってます。」
「そっかぁ。生活大変?」
「最初は公園で寝てました。でも偶然今お世話になってる人と出会って生活はギリギリですけど、なんとか大丈夫です。」
「学校は?」
「・・・学校はもう諦めました。」
「もし君がまた学校に通う意志があるなら、僕が援助するよ。」
「一ノ瀬さんにそこまでしていただく理由がありません。」
「理由か・・・。確かに君を援助する理由は僕にはない。でも、君の役に立ちたい。君を助けたい。その気持ちだけじゃだめかな?」
「お気持ちはうれしいです。でも大丈夫です。」
「大丈夫か・・・。君の大丈夫は大丈夫じゃないと思うけど。少し考えてみて。あとこれ。」
「何ですか?」
「携帯電話。好きに使ってくれていい。ただ常に持ってて。GPSがついてるから、君がどこにいるかすぐわかる。携帯を渡して、監視するつもりじゃない。ただ、君の行方がわからなくて本当に心配したんだ。お願いだから、それは受け取ってほしい。」
「・・・ありがとうございます。」
「はぁーよかった。僕の番号登録してあるから、いつでも掛けてきてくれていいから。」
母親の命日を彼女が忘れるはずない。
そう思って仕事を休み、朝から彼女の母親が眠る墓の前で待った。
お墓に手を合わせ、母親に誓った。
「もし彼女が僕を受け入れてくれるのであれば、絶対に幸せにします。だからお願いします。彼女ともう一度会わせてください。」
自分が心底おかしくなる。
数回しか会ったことがない女の子にここまで執着している。
でも頭から離れない。
彼女の笑顔をみた瞬間、俺は彼女に恋をした。
女性に触れられるだけど、吐いてしまう俺が人を恋しいと思った。
車の中でひたすら待った。
朝から待って、時刻は16時になろうとしている。
朝から何も食べてないからコンビニでおにぎりを買った。
隣のレジで男が店員を口説いていた。
まだ大学生ぐらいの男。
「ねぇ、頼むよ。前から可愛いなぁって思ってたんだ。」
「ごめんなさい。」
「そんなこと言わないでよ。」
「困ります。」
「・・・本当にだめ?」
「ごめんなさい。」
「わかった。今日は諦める。また来るから考えておいてね。」
すぐに彼女だとわかった。
化粧もしてないし、コンビニの制服にジーパン姿だけど、間違いない。
どうしよう。
ここで声をかけていいものか?
仕事終わりに声をかけよう。
一旦車に戻って仕事が終わるのを待った。
20時、彼女がコンビニの制服を脱いで出てきた。
車を降りて彼女に声をかけようとした瞬間、さっきの大学生ぐらいの男が一歩さきに彼女に声をかけた。
「仕事終わった?」
「あの・・・」
「待ってたんだ。どうしてももう少し話がしたくて。ねーいいでしょ?」
「私、困ります。」
「食事奢るからさ!ねっ?」
「大丈夫です。本当に困ります。」
「そんなこと言わないでよー。4時間も待ってたんだよ。ねっ?お願い。」
男が彼女の腕を掴み、車に向かって歩きだした。
俺は無意識に彼女の反対の腕を掴んだ。
「真凛、迎えに来た。帰ろう。」
「えっ?」
彼女が俺をみて目を見開いた。
「一ノ瀬さん、どうしてここに?」
「あんた誰?」
「お前こそ誰だ?真凛の腕をいい加減離せ。」
俺は真凛の肩を抱いて自分の車の助手席に乗せた。
男は呆気に取られている様子だったが、気にせず車を走らせた。
しばらくお互い無言だった。
お墓の近くの路肩に車を停めた。
「・・・」
「・・・」
「あの・」
「ごめん。余計なことしちゃったかな?困ってるように見えたから助けたけど。」
「いえ、助かりました。ありがとうございます。」
「なら、よかった。」
「一ノ瀬さん、どうしてあのコンビニに?」
「・・今日お母さんの命日だったでしょ?」
「覚えてくれたんですか?」
「あぁ、1年前君からの電話に出なかったことを心底後悔したよ。あの時電話に出れていたら君を助けることが出来たはずだ。」
「ありがとうございます。そんな風に思っていただいてうれしいです。」
「1年、必死に探したんだ。やっと見つけた。」
「・・・ありがとうございます。」
「お母さんのお墓行かないの?」
「朝、新聞配達のバイトをしてて、そのときにお母さんには会いに行きました。」
「そっかぁ。何時に行ったの?」
「3時です。」
「3時?ははっ。そんなに早く行ったんだ。じゃあ待ってても会えないよね。」
「お金がなくてお花を買えなくて。申し訳なくて。」
「気にしないで。花なら僕が持っていったから。今どこに住んでるの?送るよ。」
「ありがとうございます。駅で大丈夫です。」
「家まで送るよ。」
「少し距離がありますから大丈夫です。」
「遠慮しないで。どこ?」
彼女は少し悩んだ末、住んでるところを教えてくれた。
「この辺で大丈夫です。」
「わかった。」
俺が車を路肩に停めてシートベルトを外して体を傾けると彼女は俺から不自然に距離を置いた。
「どうかした?」
「いえ、なんでもないです。」
「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。」
「違います。一ノ瀬さんを警戒してるんじゃなくて、私、昨日からお風呂に入ってないので臭いと不快かなって思って。」
「そんなことないよ。家にお風呂ないの?」
「お風呂は週3回銭湯に行ってます。」
「そっかぁ。生活大変?」
「最初は公園で寝てました。でも偶然今お世話になってる人と出会って生活はギリギリですけど、なんとか大丈夫です。」
「学校は?」
「・・・学校はもう諦めました。」
「もし君がまた学校に通う意志があるなら、僕が援助するよ。」
「一ノ瀬さんにそこまでしていただく理由がありません。」
「理由か・・・。確かに君を援助する理由は僕にはない。でも、君の役に立ちたい。君を助けたい。その気持ちだけじゃだめかな?」
「お気持ちはうれしいです。でも大丈夫です。」
「大丈夫か・・・。君の大丈夫は大丈夫じゃないと思うけど。少し考えてみて。あとこれ。」
「何ですか?」
「携帯電話。好きに使ってくれていい。ただ常に持ってて。GPSがついてるから、君がどこにいるかすぐわかる。携帯を渡して、監視するつもりじゃない。ただ、君の行方がわからなくて本当に心配したんだ。お願いだから、それは受け取ってほしい。」
「・・・ありがとうございます。」
「はぁーよかった。僕の番号登録してあるから、いつでも掛けてきてくれていいから。」