君に溺れた
真凛は頭の検査をするため数日入院することになった。

交代で警察官に病室前を警備してもらっている。

俺は昼間は仕事をして、夜は病院に付き添った。

昼休憩のとき、食堂での女性警官たちの話に耳を疑った。

「○○病院の患者の警護って一ノ瀬係長の彼女って本当?」

「そうみたい。あーまさか一ノ瀬係長があんなに若い子を選ぶなんて意外よね。」

「そうね。数年前にホモ疑惑もあったのにね。」

「あったあった。でも一番ショックなのって山田さんじゃない?あの人ずっと一ノ瀬係長一筋だったもんね。」

「そうそう。全然相手にされてないのに自分は特別みたいに自慢してたよね。」

「してた。してた。転勤が決まって焦って告白して玉砕したんじゃない?この前も休んでたよね。今日だって、急に病欠って連絡してきたんだよ。」

「皆に振られたこと言うの嫌なんじゃない?あの人、プライド高いし。一ノ瀬係長の前じゃあ猫被ってたけど。」

俺は山田可南子という女性を勘違いしていたのか?

いや、あくまで噂だ。

こんな人が大勢いる食堂で言っている影口の信憑性は低いだろう。

俺はそのまま食事を続けた。

そのとき、鑑識から電話がきた。

俺は真凛のマンションの周辺の防犯カメラの解析を依頼していた。

見せたいものがあるというので、鑑識課に向かう。

鑑識からは、真凛が階段から落ちた時間に真凛のマンションの周りにいた人物がいたとのことだった。

「忙しいのに、悪いな。」

「いえ、早速鮮明解析していきますね。」

「あぁ頼む。」

「!!一ノ瀬係長、これ!?」

「!!」

俺はそのまま鑑識課を飛び出した。

真凛!
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