君に溺れた
防犯カメラには、山田可南子が映っていた。

今日、山田可南子は仕事を休んでいる。

真凛が危ない!!

俺は急いで病院に向かった。

病室前にいるはずの警官はいなかった。

病室に入ると、真凛が床に座り込んでいる。

その前に仁王立ちしている山田可南子。

「真凛!」

「・・・だい・ち・・・さん」

「山田さん、どうしてこんなことを?」

「一ノ瀬係長、この子に騙されてます。この子は一ノ瀬係長が優しいので誘惑してるんですよ。母親を殺されて、一ノ瀬係長の優しさにつけこんだ最低な女ですよ。だから私が一ノ瀬係長と別れるように言いました。」

「山田さん、どうして。」

「だって一ノ瀬係長の隣が似合うのは私です!一ノ瀬係長に認めてもらえるようずっと努力してきました。なのに、こんな子が彼女だなんて許せない!」

「山田さん、君は僕のことを勘違いしているよ。僕は君にそれだけ思ってもらえる男じゃない。7年前、真凛が一番傷ついていたときに、役に立ちたいと言って近づいた。でも、俺がただ会いたかったんだ。13も歳の離れた真凛に会いたくて。俺はそういう男だよ。決して真凛が誘惑したんじゃない。」

「・・・うそ。そんなのこの子を庇ってるだけですよね?」

「俺は真凛を愛してる。真凛じゃなきゃだめなんだ。」

「そんな・・・」

山田さんはよろけながら後退りした。

俺は真凛に駆け寄ろうとしたとき、山田さんが真凛に刃物を向けて走り出した。

俺は真凛を抱き締めた。

真凛が叫んだ。

涙が溢れている。

「まり・ん、泣かないで・・・わらっ・・て」

「大地さん!大地さん!!」

俺を一生懸命呼んでいる。

俺は薄れていく意識の中、真凛の頬を撫でる。

真凛、泣くな。



< 74 / 112 >

この作品をシェア

pagetop