君に溺れた
数日入院することになった。

警官がドアの前に立っていて、24時間交代で守ってくれている。

佐藤先生が外来と手術の合間に頻回に様子を見に来てくれた。

夜はずっと大地さんがいてくれて、私は安心して過ごすことができた。

でも、あの日、ドアの前で警護していた警官が突然替わって、女の人が入ってきた。

「誰ですか?」

「久しぶりね。」

「!?」

「あの時、私が忠告したのにまだ一ノ瀬係長にまとわりついてたのね。」

「あの時の婦警さん・・・どうして」

「目障りだと言ったはずよ。一ノ瀬係長の前から消えて。」

「・・・嫌です。」

「!?あなた、自分が一ノ瀬係長の優しさにつけこんでるってわからないの!?」

「・・・大地さんの隣を堂々と歩きたい。その一心で、6年間頑張ってきました。だから、6年前は私が大地さんから逃げてしまったけど、もう逃げません。大地さんに相応しい女性になれるようこれからも努力します。」

「っ!?生意気よ。私だって必死で一ノ瀬係長に認めてもらえるよう努力したわよ!!」

「婦警さん・・・」

私は立ち上がり婦警さんのところに歩み寄ろうとしたとき、バランスを崩して床に座り込んだ。

そのとき、大地さんが慌てた様子で入ってきた。

大地さんと婦警さんはしばらく話をしていた。

大地さんが私を抱き締めてくれたけど、ゆっくりと床に崩れ落ちていく。

お腹にナイフが刺さっている。

私は気が動転して泣き叫んでいた。

複数の警官が入ってきた。

佐藤先生も来て大地さんの処置をしてくれる。

「佐藤先生、大地さんが・・・」

「大丈夫だ。俺が助けるから、お前はここにいろ!」

大地さんがストレッチャーで運ばれていく。

婦警さんも警官に連れていかれた。

私は病室に取り残された。



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