春恋。
ふと、時計を見るとまだ授業中。
そう言えば、ずっと青空くん待っててくれてるんだ。

「青空くん。
本当に、迷惑かけちゃってごめんね…。
ありがとう。もう平気だから戻っても大丈夫だよ?」

心情とは裏腹に笑顔を作って、そう言うと
青空くんの顔が一瞬にして悲しそうな顔をして

「なんで泣きながら笑おうとすんだよ。
辛かったら辛いって言えば?
泣きたかったら、わんわん泣けば?
お前の泣いてる顔見ると俺まで苦しくなる。
いつでも頼っていいから。
だから、笑えよ。」

そう言ってくれた。
頭を撫でてくれた。

その手は、凄く雑で不器用だけれど、誰よりも暖かく、優しかった。




だけど、私は何も言えなかった。

ねぇ、青空くん。
出来ないんだよ、それは。
その選択をするなら、私は〝別れ〟を選ぶ。
皆を苦しめてしまうから。

これ以上一緒にいると、全部青空くんに当ててしまうような気がして
「ありがとう。でも、本当に大丈夫だから。」
と言って、戻ってもらった。

その時の青空くんの顔は、とてもとても
悲しそうに、自分を追い詰めたような顔をしていた。

結局は何をしても、どっちに転んでも
苦しい想いをさせてしまう。

「ごめんなさいっ…。
本当に、ごめんなさい…。」


誰もいない保健室で1人、涙を零した。
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