仔犬はオオカミの顔で笑う
『ありがとうゆまねぇー!
学園前だよね?多分20分くらいで駅につくと思うからよろしく〜』
「わかった。
じゃあそのくらいに駅でね。」
ぴっと通話を切って気づく。
寝起きですっぴん、しかもジャージ姿だ。
駅まで歩いて5分とは言え、さすがにこの格好はアウトかも知れない。
そーやを迎えに行くことがとたんに面倒になるが、いいと言ってしまったのだから仕方ない。
のそりとベッドから這い出て、洗面所へ向かった。
そーやは大学の後輩で、なぜかゆまに懐いている1つ年下の男の子だ。
顔はなかなかのイケメンだが、気取ってないとってもいい子である。
数ヶ月前に飲み会でたまたま知り合い、お互い酒好き(だが周りはそうでもない)ということで仲良くなり、
以降ちょこちょこと二人で飲みに出かけている。
そーやは自分より酒が強く、また彼の子犬のような可愛らしいキャラもあってか、二人で飲みに行っても微塵も妖しい雰囲気にならないのも気に入っていた。