放課後ニヒリスト
「抹茶ソフト、7つ」
「あいよ。1540円ね」
抹茶の程よい苦さと素朴な味に微笑がこぼれ、私はお茶屋の店先に並べられた白いベンチに腰掛けた。
目の前を過ぎていく買い物帰りの主婦、自転車に乗った学生、狭そうにゆっくりと走るトラック、あと、とにかく知らない人。
彼らと私たちの間に、今は壁があるみたいだった。
透明で、プラスチックみたいで、硝子みたいで、傍観席(ぼうかんせき)と舞台を区切るみたいに、それは立ちはだかっていた。
自分達だけ世界から置いてきぼりになって、でも現実は流れていってしまう。
オトナって、マジでわかんない。
たかが一行にも満たない数式を解くのに350年も掛けるし、それが偉大な発見だとか言う。
それよりアンタ、今月の収入はどうなのよ。
え?減った?家賃払えないじゃないのよ、この馬鹿亭主、というやりとりが聞こえてきそうで、私は昔の人の愚かさと賢さに呆れた。
商店街に備え付けられたスピーカーから、数年前に消えた歌手グループの歌声が虚しく垂れ流しになっていた。