放課後ニヒリスト
6人を駅まで送り、彼らは思い思いのことを話しながら自宅の方向のホームへと降りていった。
じゃーな、アン。
また明日なあ。
あ、俺んち寄らねぇ?
ゲームするべー。
全員の背中が見えなくなると、私は一人マンションへ帰った。
今日の晩御飯は、あれだ、揚げ出し豆腐。
新しく出来たばかりのコンビニに入り、棚をすべて見ながらゆっくりと店内を旋回する。
コスメを見て、雑誌を見て、ドリンク、お菓子と食玩、アイス、文房具・・・
おかずの並んだクーラーで揚げ出し豆腐の入ったパックを見つけると、それと他に1リットル入りのストレートティーのペットボトルを掴んだ。
レジにそれを置いて、愛想の悪い店員の告げた金額ピッタリに小銭を並べ、私は外に出た。
遠くの空が、赤くなってきている。
交差点で赤信号に立ち止まり、私は煙草をふかすサラリーマンに顔をしかめた。
頭上を、カラスが飛んでいく。
エラ、と母が私に名づけたのには、少女時代に大好きだった童話の主人公の名前だから、と言うなんともいいがたい理由があった。
シンデレラ、である。
Ella、エラ、というのが彼女の本当の名前で、継母が暖炉の前で灰まみれになって眠るエラを見て、灰まみれのエラ、と言う意味のCinder Ellaと呼び、それがくっついてCinderellaになったのだとか。
だけど。
私と彼女、同じエラでも、シンデレラのほうが幸せだったのではないだろうか。
血のつながらない姉や母にいじめられたといっても、家族と暮らせていたわけだし、最終的にはいいところのお嫁さんになったのだから。
4LDKは、中学1年生女子の一人暮らしには広すぎる。
贅沢は言うもんじゃないよ、全く。