放課後ニヒリスト

教室の匂いは、嫌いだった。
どうも冷凍食品の詰まった弁当くさくて、苦手だ。





ぼんやりと空を眺めながら、私は缶コーヒーを一口口に含んだ。

朝の喧騒の中、私はユウとくだらない話をしていた。





自販機が故障してただとか、購買が値上げするそうだとか、宿題中に電話していたら寝てただとか、本当にどうでもいいこと。


無表情な私を見て、彼は軽くため息をついた。

「どうした、アンちゃん」

お前らしくないぜ?
うん、とだけ零して、私は空になったコーヒーの缶を握りつぶした。
アルミ缶だからね、簡単につぶれる。
私の心と一緒。弱いから、直ぐにぺちゃんこになる。




「焼きそばパン、130円か・・・」
「うん・・・あー、ガムとかは値段変わらないの?」
「あ、俺今日はチョコチップクッキー持ってきた」
「あんた、ナッツ派だってこないだ言ってなかった?」
「気のせいだろ」

笑って、私は授業の準備を始めた。

1限って?
ああ、歴史。
担当の眉毛が繋がっていることにしか気が回らないんだよねぇ。
あー言えてる。
そんなことで笑っていると、チャイムが私たちに授業を押し付け、廊下からは眉毛がつながった男の靴音が聞こえてきた。
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