放課後ニヒリスト
だんだん薄暗くなっていく空が、なんだか青春と言う言葉を思い起こさせた。
実際どういうものなのかは判らないけど、なんだかそんな感じがした。
「青い春か・・・」
ユウがしんみりとそう呟いたから、笑ってしまった。
「私もちょうど思ったところ」
「ぶっちゃけ、青春なんて漫画の中だけだと思ってた」
「うん・・・」
青春なんて、恋とか、友情とか、そういった形のない、くだらないもの。
そう思っていたけど、実際はすごく尊いものなのかもしれない。
部活もしない、恋もしない、学校の友達は6人だけ。
それが、ニヒリストと呼ばれる私たちだったけど、十分青春してるのかも。
「あ、私ここだから。じゃね」
「また明日な」
「転ぶなよ?」
「うるさい!」
電車のドアが閉まって、ゆっくりとホームから去っていく。
線路をなぞっていくそれを見送りながら、私は無性に泣きたくなった。
なんでだろ。
私はこのままでいたいのに、時は過ぎていく。
今日はあと7時間で終わるし、そのあとは明日と言う未来しか来ない。
来年になったら先輩は卒業して高等部に上がるし、私もいずれは高校生になる。
そうしたら大学に行かなくちゃいけなくて、次は就職?
やだよ、そんなの。
まだ中学生のままでいたいのに。
晩御飯のメニューに悩んだことはなかったのに、私は初めて将来に悩んだ。