よみがえるあの娘

タイトル未編集

運命は残酷にやってくる。
都会の交差点を渡り、ゴスロリのファッション店を目指して
小股で歩いていた私、ランはトラックにはねられ心拍停止した。
霊安室に安置された仏様に、混じった私。
そこに一人の少女が滑り込んできた。
少女は様々な生前の彼らの体に触れると、死後まもない人間だけを蘇生し、
見事に復活させていった。
そして私の元にも歩み寄ると、必死に彼女は呪文を唱え始めた。
「天におります神々よ、我がアユミの名にかけて、この哀れなる魂を今一度現世によみがえらせたまえ、渇っ！！」
激しく咳き込みながら、私は息を吹き返しました。
「よく生き返ったね」
「あなたは誰なの？」
「アユミっていいます。ちょっとしたマジシャンです」
「ここにいる人全部よみがえらせられるの？」
「さすがに無理で、悔しいんですよね。
　特殊能力で私の運を犠牲にしながら、死者を復活させられるんですが、叶わないときもあります」
アユミは無念そうにため息を吐くと、深呼吸した。
ランは奇跡の状況に、頭がついてこれなかった。
あの時、確かにトラックにひかれて、
ベタな漫画やドラマのように命尽きたはずなのに、
アユミという一人の少女の犠牲によって救われるなんて。
霊安室を出て、朝までつまらない話をして、
ファストフードに寄って、温かいコーヒーを飲みながら
ランは必死にアユミに礼を述べた。
しかし、アユミは申し訳なさそうな表情をしてこういった。
「実は私のこの能力は、弟を亡くしてから発見したものなんです」
なんでも、アユミの弟は食べ物をのどに詰まらせ、死んでしまったらしい。
その未練さから、気がつくと能力を手にしていたようだ。
ランはアユミを抱きしめていた。
「自分の運をいくら犠牲にしても平気なの？」
「でも、弟は戻ってきませんし」
「アユミちゃん、苦労しなくたっていいんだよ」
ランは泣きはらした顔で、アユミを切実に説得した。

それでも使命があるという、アユミの瞳を見ると
ランは何もいえなかった。
またの再会を約束して、二人はとりあえずさよならをした。