LOVE物語2
ーside遥香ー
私は、カーテンの隙間から差し込む朝日で目が覚めた。
「あ、遥香ちゃん起きた?」
近藤さんが点滴を取替えながら私に声をかけた。
「近藤さん、私…まだここにいないとダメなの?」
「佐々木先生がね、昨日はぐっすり眠ってたから遥香ちゃんが起きるまでは、ここで寝かせてあげてって言われたの。だから、この点滴が終わったら帰れるよ。」
「よかった…。」
「うん、熱はだいぶ下がったみたいだね。」
近藤さんがおでこに手を当てた。
「でも、一応熱はかろうか。」
近藤さんから体温計を渡され脇に挟んだ。
「遥香ちゃん、試験勉強頑張ってたのね。」
「いや、そんなことないですよ。英語は解けないものばかりでしたし…。でも、生物と数学は結構いけたと思うんですけどね…。」
「遥香ちゃん、苦手科目を他の科目で補えたならきっと合格してるよ。」
「そうかな…?」
そんな会話をしていると、体温計が鳴った。
「遥香ちゃん、見せて。」
近藤さんに体温計を渡す。
「うん、まだ高いけど昨日ほどじゃないわ。」
数値は38.5をしめしていた。
それでも、体は昨日より怠くないし息苦しくもない。
「近藤さん?」
「ん?」
「尊は?」
そういえば、いつも目が覚めた時は尊がいるのに、今日はいないことに気づいて不安になった。
「佐々木先生、急患が入ったからそっちに向かったの。目が覚めてそばにいないと不安になるから代わりに私がそばにいてあげてって頼まれたのよ。」
「近藤さん、迷惑かけちゃったね。ごめんなさい。」
「こら。謝らないの。迷惑とか思ってないよ。それに、昔からの付き合いなんだからそういう事は考えなくてもいいの。」
「ありがとう。」
「遥香ちゃん、朝ご飯は食べれそう?」
「んー…」
あまり食欲がない。
首を横に振ると
「分かった。でも、無理に食べなくていいから少しだけ挑戦してみない?私もここにいるから。」
「どうしても食べないとダメですか?」
「うん、体力が熱でだいぶ奪われちゃったからさ…。それに、低体重だから少しだけ食べてほしい。」
「分かった。」
「じゃあ、食事持ってくるね。」
「はい。」
近藤さんが病室から出て、私は試験問題の丸つけがしたくて、そばに置いてあったリュックを取ろうとしてると、
「遥香。何してるんだ?」
「え!」
いきなり呼ばれてびっくりした。
「まだ寝てないと。」
尊は体温計のグラフを見ている。
「だいぶ熱は下がったみたいだな。」
「下がったから丸つけだけしたい。」
「ダメだ。まだ38.5もあるし。38℃切ったらにしな。」
「でも…」
「でもじゃない。それより、診察するから服浮かせられる?」
「うん。」
尊の診察を受けていると、喘息の発作が出てしまった。
「遥香!?」
尊は、私に吸入器を当てて背中をさすってくれた。
発作がおさまると一気に疲れてベットにもたれ掛かっていた。
「もう苦しくないか?」
「うん。」
「遥香ちゃん、朝ご飯持って来たよ…って、大丈夫!?」
近藤さんは、私の浅い呼吸を見て発作が起きたことを悟った。
近藤さんの言葉に頷く。
「ゆっくりでいいから遥香に食べさせてあげて。遥香も、無理して食べなくていいから。」
「うん。」
尊は、近くの椅子に座った。
ゆっくり箸を進めていくけどやっぱり食べられそうにない。
そんな私の様子を見ていた尊が持っていた箸を取りお盆の上に置いた。
「無理しなくていいって言っただろ?もう、無理に食べなくていいよ。近藤さん、お盆下げてもらっていい?」
「はい。」
近藤さんは私の残したご飯を片付けてくれた。
尊は何でも私の心を読む。
食べられないこともちゃんと分かってくれる。
「発作起きたばかりだから、辛いと思うけどまだ起きてような。また、横になったら発作が起きちゃうと思うから。」
「んー…」
発作で胸が苦しくて尊の胸に頭を預けた。
そんな私を、尊は何も言わず抱きしめてくれた。
でも、尊は仕事がまだ残ってるのかな…?
「尊?仕事あるんじゃないの?」
「3時まで外来ないからしばらくはここにいれるよ。」
「よかった。」
「遥香、今日は仕事終わったら一緒に帰ろうな。」
「え!私帰れるの?」
「当たり前だ。言っただろ?入院は嫌なことくらい知ってるよ。発作はまだ出ると思うけど、ちゃんと俺が診るから。安心して。」
「うん!ありがとう尊。」
「家に帰っても、無理はするなよ。」
「分かった。」
「もうそろそろ1時間経つな。よし、お腹は気持ち悪くない?」
「大丈夫。」
「じゃあ、横になろっか。」
「はい。」
「今日は大人しいんだな。」
「いつも大人しいです。」
「いつも反抗するだろ?」
「しません!」
「点滴刺そうとしてもヤダ!って言うし、診察するよって言うと逃げるしな。」
頭をポリポリかく尊。
尊に1つ1つ言われると、確かに私は尊に対抗した気がする。
「ごめんね、尊。」
「…でも、そんな遥香の一面があって安心したんだよ。子供でいる時期が短いと、甘えることを知らないで育つからさ。まだ、子供の一面が見れて嬉しい。」
「尊から見たら子供だろうね。」
「遥香は、いつも大人っぽいからそういうところがあっていいんだよ。」
「よく子供扱いするくせに。」
「それは、許して。遥香が可愛すぎるのがいけないんだから。」
そんなこと、さらっと言うけど結構恥ずかしいんだからね。
掛け布団を顔までかけて尊に顔を隠した。
「照れるなって。」
「照れてない!」
「ほら、布団から出てきなよ。呼吸苦しいだろ。」
「尊、これからも頼っていい?」
私は、ずっと気になっていた。
最初に私と暮らそうと言ったのはまだ私が未成年で、喘息を患っているから保護するだけっていうことで一緒に暮らしている。
一応、今は尊が私の彼氏だけど家族ではない。
私も高校を卒業したらひとり立ちしないといけないのかな。
でも、不安だよ。
また、1人になるのかな…。
『彼氏』っていってもずっと一緒にいれるわけでもない。
だから、ずっと言葉にできずにいた。
尊の考えが知りたくなった。
正直な気持ちをズバズバ言えないから遠回しで尊に聞いてみた。
これからも頼っていいのか。
「当たり前だろ?」
えっ?
思わず体を起こしていた。
「ん?何でそんなに驚くんだ?」
尊の頭にはてなマークでいっぱいだった。
「私、今年から大学生になるんだよ?」
「うん。」
「19になるんだよ?」
「うん。」
「私、ひとり立ちしなくていいの?尊の家から出ていかなくていいの?」
「あのな、遥香。出ていかれたら俺が寂しくなるんだけど。
それに、2年前遥香に一緒に暮らそうって言っただろ?それは、遥香が未成年だからとか喘息を患っているからっていう理由だけじゃない。遥香のことを、初めて診察した日のこと覚えてる?
あの日は、俺にとって大切な日なんだ。遥香と出会って、初めて女性を好きになれたから。それから、段々と遥香のことを守っていきたいって思えたんだよ?
それに…もう、遥香のいない人生なんて考えられない。」
私は、勘違いしてたんだ。
本当に尊は、あの日から私を心配して愛してくれていたんだ。
1人の女性として。
ちゃんと見ていてくれていたんだ。
私は、子供だった。
尊は、こんなにも私のことを想ってくれているのに。
「尊…これからもよろしくね。」
私は、尊のことを抱きしめた。
愛してるとか、大好きとか尊みたいに言えないけど、これが私の精一杯の気持ち。
「こちらこそ。よろしくな。」
尊の言葉に頷いた。
喘息も、過去も受け入れてくれた尊だからこれからもずっと一緒にいたいって思う。
こんなにも私を想ってくれる人は他にいない。
私も、尊と出会って生きてることが楽しいって思えた。
自分を隠さず、ありのままを見せられる存在。
その存在は尊しかいない。
私も尊のいない人生なんか考えられないよ。
私は、尊の腕の中で眠りについた。
私は、カーテンの隙間から差し込む朝日で目が覚めた。
「あ、遥香ちゃん起きた?」
近藤さんが点滴を取替えながら私に声をかけた。
「近藤さん、私…まだここにいないとダメなの?」
「佐々木先生がね、昨日はぐっすり眠ってたから遥香ちゃんが起きるまでは、ここで寝かせてあげてって言われたの。だから、この点滴が終わったら帰れるよ。」
「よかった…。」
「うん、熱はだいぶ下がったみたいだね。」
近藤さんがおでこに手を当てた。
「でも、一応熱はかろうか。」
近藤さんから体温計を渡され脇に挟んだ。
「遥香ちゃん、試験勉強頑張ってたのね。」
「いや、そんなことないですよ。英語は解けないものばかりでしたし…。でも、生物と数学は結構いけたと思うんですけどね…。」
「遥香ちゃん、苦手科目を他の科目で補えたならきっと合格してるよ。」
「そうかな…?」
そんな会話をしていると、体温計が鳴った。
「遥香ちゃん、見せて。」
近藤さんに体温計を渡す。
「うん、まだ高いけど昨日ほどじゃないわ。」
数値は38.5をしめしていた。
それでも、体は昨日より怠くないし息苦しくもない。
「近藤さん?」
「ん?」
「尊は?」
そういえば、いつも目が覚めた時は尊がいるのに、今日はいないことに気づいて不安になった。
「佐々木先生、急患が入ったからそっちに向かったの。目が覚めてそばにいないと不安になるから代わりに私がそばにいてあげてって頼まれたのよ。」
「近藤さん、迷惑かけちゃったね。ごめんなさい。」
「こら。謝らないの。迷惑とか思ってないよ。それに、昔からの付き合いなんだからそういう事は考えなくてもいいの。」
「ありがとう。」
「遥香ちゃん、朝ご飯は食べれそう?」
「んー…」
あまり食欲がない。
首を横に振ると
「分かった。でも、無理に食べなくていいから少しだけ挑戦してみない?私もここにいるから。」
「どうしても食べないとダメですか?」
「うん、体力が熱でだいぶ奪われちゃったからさ…。それに、低体重だから少しだけ食べてほしい。」
「分かった。」
「じゃあ、食事持ってくるね。」
「はい。」
近藤さんが病室から出て、私は試験問題の丸つけがしたくて、そばに置いてあったリュックを取ろうとしてると、
「遥香。何してるんだ?」
「え!」
いきなり呼ばれてびっくりした。
「まだ寝てないと。」
尊は体温計のグラフを見ている。
「だいぶ熱は下がったみたいだな。」
「下がったから丸つけだけしたい。」
「ダメだ。まだ38.5もあるし。38℃切ったらにしな。」
「でも…」
「でもじゃない。それより、診察するから服浮かせられる?」
「うん。」
尊の診察を受けていると、喘息の発作が出てしまった。
「遥香!?」
尊は、私に吸入器を当てて背中をさすってくれた。
発作がおさまると一気に疲れてベットにもたれ掛かっていた。
「もう苦しくないか?」
「うん。」
「遥香ちゃん、朝ご飯持って来たよ…って、大丈夫!?」
近藤さんは、私の浅い呼吸を見て発作が起きたことを悟った。
近藤さんの言葉に頷く。
「ゆっくりでいいから遥香に食べさせてあげて。遥香も、無理して食べなくていいから。」
「うん。」
尊は、近くの椅子に座った。
ゆっくり箸を進めていくけどやっぱり食べられそうにない。
そんな私の様子を見ていた尊が持っていた箸を取りお盆の上に置いた。
「無理しなくていいって言っただろ?もう、無理に食べなくていいよ。近藤さん、お盆下げてもらっていい?」
「はい。」
近藤さんは私の残したご飯を片付けてくれた。
尊は何でも私の心を読む。
食べられないこともちゃんと分かってくれる。
「発作起きたばかりだから、辛いと思うけどまだ起きてような。また、横になったら発作が起きちゃうと思うから。」
「んー…」
発作で胸が苦しくて尊の胸に頭を預けた。
そんな私を、尊は何も言わず抱きしめてくれた。
でも、尊は仕事がまだ残ってるのかな…?
「尊?仕事あるんじゃないの?」
「3時まで外来ないからしばらくはここにいれるよ。」
「よかった。」
「遥香、今日は仕事終わったら一緒に帰ろうな。」
「え!私帰れるの?」
「当たり前だ。言っただろ?入院は嫌なことくらい知ってるよ。発作はまだ出ると思うけど、ちゃんと俺が診るから。安心して。」
「うん!ありがとう尊。」
「家に帰っても、無理はするなよ。」
「分かった。」
「もうそろそろ1時間経つな。よし、お腹は気持ち悪くない?」
「大丈夫。」
「じゃあ、横になろっか。」
「はい。」
「今日は大人しいんだな。」
「いつも大人しいです。」
「いつも反抗するだろ?」
「しません!」
「点滴刺そうとしてもヤダ!って言うし、診察するよって言うと逃げるしな。」
頭をポリポリかく尊。
尊に1つ1つ言われると、確かに私は尊に対抗した気がする。
「ごめんね、尊。」
「…でも、そんな遥香の一面があって安心したんだよ。子供でいる時期が短いと、甘えることを知らないで育つからさ。まだ、子供の一面が見れて嬉しい。」
「尊から見たら子供だろうね。」
「遥香は、いつも大人っぽいからそういうところがあっていいんだよ。」
「よく子供扱いするくせに。」
「それは、許して。遥香が可愛すぎるのがいけないんだから。」
そんなこと、さらっと言うけど結構恥ずかしいんだからね。
掛け布団を顔までかけて尊に顔を隠した。
「照れるなって。」
「照れてない!」
「ほら、布団から出てきなよ。呼吸苦しいだろ。」
「尊、これからも頼っていい?」
私は、ずっと気になっていた。
最初に私と暮らそうと言ったのはまだ私が未成年で、喘息を患っているから保護するだけっていうことで一緒に暮らしている。
一応、今は尊が私の彼氏だけど家族ではない。
私も高校を卒業したらひとり立ちしないといけないのかな。
でも、不安だよ。
また、1人になるのかな…。
『彼氏』っていってもずっと一緒にいれるわけでもない。
だから、ずっと言葉にできずにいた。
尊の考えが知りたくなった。
正直な気持ちをズバズバ言えないから遠回しで尊に聞いてみた。
これからも頼っていいのか。
「当たり前だろ?」
えっ?
思わず体を起こしていた。
「ん?何でそんなに驚くんだ?」
尊の頭にはてなマークでいっぱいだった。
「私、今年から大学生になるんだよ?」
「うん。」
「19になるんだよ?」
「うん。」
「私、ひとり立ちしなくていいの?尊の家から出ていかなくていいの?」
「あのな、遥香。出ていかれたら俺が寂しくなるんだけど。
それに、2年前遥香に一緒に暮らそうって言っただろ?それは、遥香が未成年だからとか喘息を患っているからっていう理由だけじゃない。遥香のことを、初めて診察した日のこと覚えてる?
あの日は、俺にとって大切な日なんだ。遥香と出会って、初めて女性を好きになれたから。それから、段々と遥香のことを守っていきたいって思えたんだよ?
それに…もう、遥香のいない人生なんて考えられない。」
私は、勘違いしてたんだ。
本当に尊は、あの日から私を心配して愛してくれていたんだ。
1人の女性として。
ちゃんと見ていてくれていたんだ。
私は、子供だった。
尊は、こんなにも私のことを想ってくれているのに。
「尊…これからもよろしくね。」
私は、尊のことを抱きしめた。
愛してるとか、大好きとか尊みたいに言えないけど、これが私の精一杯の気持ち。
「こちらこそ。よろしくな。」
尊の言葉に頷いた。
喘息も、過去も受け入れてくれた尊だからこれからもずっと一緒にいたいって思う。
こんなにも私を想ってくれる人は他にいない。
私も、尊と出会って生きてることが楽しいって思えた。
自分を隠さず、ありのままを見せられる存在。
その存在は尊しかいない。
私も尊のいない人生なんか考えられないよ。
私は、尊の腕の中で眠りについた。