LOVE物語2
ーside尊ー

腕の中でぐっすり眠る遥香。

そんな遥香をたまらなく愛おしくなる。

それにしても、遥香は俺の思っている以上に大人だった。

子供でいる時期が短すぎた分、甘えたりしてこなかった分、きっと分からなくなってるんだよな。

だから、自分からは甘えたりしない。

必要最低限のことしか頼らない。

本当はもっともっと甘えて頼ってほしいんだけどな。

それができればいいんだけど。

「佐々木先生。」

「近藤さん。」

「どうしたんですか?そんな深刻そうな顔して。」

「いや…。」

「遥香ちゃんのことですか?」

「まぁ…そんなところだよ。」

「遥香ちゃんの熱は下がってきてますよね?」

「あ、体調のことだけじゃないんだ。心の方も心配で。遥香、子供でいる時間が短かったから甘えることを知らずに育ったみたいで。」

「そうですよね…。私も、そうでしたから。」

「え?」

「まあ、私は遥香ちゃんみたいにひどい事はされてないんですけどね。」

「それってまさか…」

「私、施設で育ったんです。7歳の頃、嵐が両親を連れ去ったみたいで。だから、遥香ちゃんの気持ちは何となく分かるんです。人を頼ることがすごい怖いんですよ。それが大切な人であればあるほど。遥香ちゃんの場合は、自分の殻に閉じこもってきた時間の方が長かったんです。だから、甘え方が分からないとかじゃなくて、失ってからが怖いんだと思いますよ。子供の頃、誰もが当たり前のように感じている幸せを十分に受けられなかったから。大切な人と、深く関われば関わるほど傷つくのは自分ですから。だから、人と付き合う上で、距離を置いちゃうんだと思います。」

言葉でずっとそばにいるとか言ってきた。

それは、俺の本当の気持ち。

だけど、それを伝えるには言葉だけじゃ足りない。

遥香は俺を信じてついてきてくれた。

一緒に過ごしている今を通してそれは分かる。

でも、やっぱり不安はあると思う。

俺も、不安だから。

初めて好きになったから、分からないことも多い。

今まで、遥香を目の前にすると本能のままに行動してきた。

もちろん、本能だけじゃない。

遥香と出会ってから色んなことがあった。

でも、その色んなことから逃げず一緒に乗り越えていった。

だから、俺はこれからもそうやって過ごしていきたい。

不安とか感じさせないくらい楽しませよう。

ゆっくり時間をかけて、遥香がもっと安心して甘えることができるようにしていこう。

焦らず、俺達らしく。

人の尺度で考えずに、ありのままの自分達で気持ちを変えていけばいいんだ。

「近藤さん、ありがとう。それから、話してくれてありがとう。」

「いえ。私も応援してますから。2人のこと。」

近藤さんはそう言うとクシャっと笑った。
< 27 / 54 >

この作品をシェア

pagetop