LOVE物語2
ーside尊ー
遥香の部屋から、ナースコールが押されたことを聞いて急いで駆けつけと、過呼吸を起こしている遥香がいた。
暴れたのか、部屋の物が全て散乱している。
きっと、あの果物のナイフか。
母親にちゃんと言っておくべきだった。
ごめんな。遥香。
本当は今すぐにでも、遥香を抱きしめたかった。
だけど、きっと遥香はパニックになってるから余計に怖がってしまう。
できるだけ、怖がらないことに配慮しながら紙袋を遥香の口に当てた。
微弱で呼吸はしてくれているものの、意識はない。
口唇にもチアノーゼが見られる。
ずっと喘息が出ていたんだな…。
ようやく、発作も収まり過呼吸も正常の呼吸に戻ってきた。
だけど、しばらくは遥香がいる前で刃物を使う事は禁止だな。
いくら、俺だけが注意していても遥香の周りが気をつけてあげないと、遥香はまたパニックになってしまう。
もう、遥香の苦しむ姿は見たくない。
そういえば、犯人と遥香は接触があったのだろうか?
遥香の知り合いなら、どうしてこうなったんだろうか。
遥香にも聞けるような状況じゃない。
「失礼します。」
医局に大翔君と千尋ちゃんが入ってきた。
「あ、どうした?」
「あの、遥香のことでちょっと話が。」
「分かった。談話室に行ってて。」
「はい。」
俺は、千尋ちゃんと大翔君に先に部屋へ向かってもらった。
もしかしたら、何か知っているのかもな。
とりあえず、午前中の分の患者さんのカルテを整理してから、談話室へと向かった。
「ごめん、待たせたね。」
「いえ。」
「もしかして…何かわかった?」
「遥香を刺した相手が、うちの学校の生徒だったそうです。」
やっぱりそうか。
だけど、遥香は人に恨まれるような事は絶対にしないはず。
だから、きっと一方的な理由なんだろう。
身勝手な理由で、遥香を傷つけた犯人が許せない。
「遥香は、恨まれるような事は絶対にしません。あの子は、自分のことよりも相手を優先できる優しい子です!」
「千尋ちゃん。落ち着いて。それは、分かってる。分かってるから余計に悔しいんだ。そんなに優しい遥香を、傷つけた犯人を許せない。」
「尊さん…?ダメですよ、尊さんまでその犯人が開放されて刺しに行ったら…」
大翔君は、何か勘違いしてる。
「俺は、そんなことしないよ。でも、少年院では十分に反省して罪を償ってほしい。」
「…そうですよね。」
「遥香、大丈夫ですか?」
「それが、さっきパニックを起こして過呼吸と発作を同時に起こしたから大分ぐったりしている。」
「え!パニック?」
「あぁ。実は、母親とその家族の人達が遥香の御見舞に来てくれたんだ。でも、母親が持ってきたりんごを向こうとナイフを出したんだ。それを見て、遥香はパニックを起こした。」
「そうだったんですか。」
「だから、しばらくは遥香の前で刃物を使う事をやめて欲しくて。」
「分かりました。」
「さっきのことで、忘れていた事件がフラッシュバックしたから、今はちゃんと話せるような状況じゃないかもしれない。だから、日を改めてまた御見舞に来てもらえる?」
「はい。でも、遥香には私達は味方だからと伝えておいてください。」
「分かった。ありがとう、千尋ちゃん。大翔君。」
「俺も、千尋も遥香のこと大切に思ってますから。」
「そう言ってもらえると、遥香も喜ぶよ。」
「それでは、失礼します。」
「気をつけて。」
千尋ちゃんと大翔君と分かれてから、遥香の病室へと向かった。
「遥香。」
「…。」
「怖いか?」
「ごめん…尊。」
「なんで遥香が謝るんだ?」
「だって、私尊のこと突き飛ばしたから…」
「そんなこと謝らなくていいんだ。むしろ、あんな状態で怖がるなって言う方が無理がある。」
俺も、不注意だった。
怖がっているところを、余計に刺激してしまった。
「なぁ、遥香?」
「え?」
「もう、無理するなよ。」
「え?」
「何があったか知らないけど、無理に思い出さなくていいんだ。」
「なんで…分かったの?」
「その瞳を見れば分かるよ。泣いてたんだろ?怖かったよな。出来事を思い出すだけで辛いのに、犯人が言っていた言葉なんか思い出すな。」
遥香は眠りながら言っていた。
「ごめんなさい」って。
その言葉の中には
「花梨さん」って、何度も言っていた。
だから、きっとその人関係で遥香は襲われた。
目が覚めてからも、犯人が言った言葉を思い出していたことがすぐに分かった。
心療内科医としての判断だった。
「遥香…抱きしめるよ?」
「…うん。」
遥香の体を自分の胸に抱き寄せた。
「怖くない?」
少しだけ身体が震えていることが分かる。
「うん。」
だよな。
俺に気を遣って『怖い』なんて言わないよな。
それが、遥香の優しさだから。
「これからしばらくは、外に出る時は一緒に出ような。いつでも、守れるように。」
「でも、私を襲って来たんだから…もしかしたら、尊が巻き込まれるよ…。だから、ダメだよ。」
「遥香。遥香がそんなことを気にしなくていいんだよ。遥香を守るためなら俺は命張ってでも守る。それくらい遥香のことを愛してるから。だから、もう1人で悩まなくていいから。いつも言ってるだろ?何かあったらすぐに言えって。遥香の抱えている悩みを半分にして、一緒に背負っていこう?それが、一緒になるってことだろ?2人でなら、悲しみや苦しみが半分にできるだろ?もう、1人で抱え込むな。」
遥香を抱きしめながら、しっかりとこの温もりを感じながら口にしていた。
遥香にはもう傷ついてほしくない。
だから、今まで以上に守っていこうって決めた。
遥香とこれからもずっと一緒にいれるように。
遥香は、ずっと胸の中で泣いていた。
その小さい背中を優しくなでる。
きっと、傷の痛みよりも心の痛みの方が上回っている。
遥香の心の負担を減らすために、1人で抱え込ませない。
大切に守っていくから。
2人で幸せに過ごすために。
「尊…?」
「どうした?」
「ありがとう…」
「あぁ。」
遥香の涙を拭いしばらく泣き止むまで落ち着かせた。
「大丈夫か?」
顔を覗き込むと、顔を逸らされてしまった。
「遥香?」
「尊…」
「頭痛いか?」
俺の言葉に遥香は頷いた。
「ちょっと横になろうか。痛みはどっち?」
「んー、左。」
痛みの感じる左側の頭を下にして遥香を寝かせた。
「目元冷やすか?」
「うん…」
俺は、ナースコールを押して保冷剤とタオルを持ってきてもらうように伝えた。
しばらくは遥香を1人にはできない。
むしろ、今は1人にしておきたくない。
少しの移動時間でさえ、遥香に何かあったらって思うと怖い。
遥香が眠り続けていた1週間は生きた心地がしなかった。
もう、遥香がいなくなることなんて考えたくない。
「失礼します。」
近藤さんにそばにいてもらうように頼むか。
「近藤さん、悪いんだけど…」
「分かってます。」
「え?」
「遥香ちゃんのそばにいます。私もそのつもりで、残りの仕事はほかの看護師に任せてきましたので。今は、遥香ちゃんのそばにいてあげたいんです。」
近藤さんも、ずっと遥香の心配をしてくれていた。
「ありがとう。よろしくな。」
「はい。」
近藤さんが一緒なら、安心できる。
ずっと、一緒に遥香のそばで看護をしてくれていた近藤さんなら、恐怖心も和らぐだろう。
俺は、後の事は近藤さんに任せて午後の外来の診察に向かった。
遥香の部屋から、ナースコールが押されたことを聞いて急いで駆けつけと、過呼吸を起こしている遥香がいた。
暴れたのか、部屋の物が全て散乱している。
きっと、あの果物のナイフか。
母親にちゃんと言っておくべきだった。
ごめんな。遥香。
本当は今すぐにでも、遥香を抱きしめたかった。
だけど、きっと遥香はパニックになってるから余計に怖がってしまう。
できるだけ、怖がらないことに配慮しながら紙袋を遥香の口に当てた。
微弱で呼吸はしてくれているものの、意識はない。
口唇にもチアノーゼが見られる。
ずっと喘息が出ていたんだな…。
ようやく、発作も収まり過呼吸も正常の呼吸に戻ってきた。
だけど、しばらくは遥香がいる前で刃物を使う事は禁止だな。
いくら、俺だけが注意していても遥香の周りが気をつけてあげないと、遥香はまたパニックになってしまう。
もう、遥香の苦しむ姿は見たくない。
そういえば、犯人と遥香は接触があったのだろうか?
遥香の知り合いなら、どうしてこうなったんだろうか。
遥香にも聞けるような状況じゃない。
「失礼します。」
医局に大翔君と千尋ちゃんが入ってきた。
「あ、どうした?」
「あの、遥香のことでちょっと話が。」
「分かった。談話室に行ってて。」
「はい。」
俺は、千尋ちゃんと大翔君に先に部屋へ向かってもらった。
もしかしたら、何か知っているのかもな。
とりあえず、午前中の分の患者さんのカルテを整理してから、談話室へと向かった。
「ごめん、待たせたね。」
「いえ。」
「もしかして…何かわかった?」
「遥香を刺した相手が、うちの学校の生徒だったそうです。」
やっぱりそうか。
だけど、遥香は人に恨まれるような事は絶対にしないはず。
だから、きっと一方的な理由なんだろう。
身勝手な理由で、遥香を傷つけた犯人が許せない。
「遥香は、恨まれるような事は絶対にしません。あの子は、自分のことよりも相手を優先できる優しい子です!」
「千尋ちゃん。落ち着いて。それは、分かってる。分かってるから余計に悔しいんだ。そんなに優しい遥香を、傷つけた犯人を許せない。」
「尊さん…?ダメですよ、尊さんまでその犯人が開放されて刺しに行ったら…」
大翔君は、何か勘違いしてる。
「俺は、そんなことしないよ。でも、少年院では十分に反省して罪を償ってほしい。」
「…そうですよね。」
「遥香、大丈夫ですか?」
「それが、さっきパニックを起こして過呼吸と発作を同時に起こしたから大分ぐったりしている。」
「え!パニック?」
「あぁ。実は、母親とその家族の人達が遥香の御見舞に来てくれたんだ。でも、母親が持ってきたりんごを向こうとナイフを出したんだ。それを見て、遥香はパニックを起こした。」
「そうだったんですか。」
「だから、しばらくは遥香の前で刃物を使う事をやめて欲しくて。」
「分かりました。」
「さっきのことで、忘れていた事件がフラッシュバックしたから、今はちゃんと話せるような状況じゃないかもしれない。だから、日を改めてまた御見舞に来てもらえる?」
「はい。でも、遥香には私達は味方だからと伝えておいてください。」
「分かった。ありがとう、千尋ちゃん。大翔君。」
「俺も、千尋も遥香のこと大切に思ってますから。」
「そう言ってもらえると、遥香も喜ぶよ。」
「それでは、失礼します。」
「気をつけて。」
千尋ちゃんと大翔君と分かれてから、遥香の病室へと向かった。
「遥香。」
「…。」
「怖いか?」
「ごめん…尊。」
「なんで遥香が謝るんだ?」
「だって、私尊のこと突き飛ばしたから…」
「そんなこと謝らなくていいんだ。むしろ、あんな状態で怖がるなって言う方が無理がある。」
俺も、不注意だった。
怖がっているところを、余計に刺激してしまった。
「なぁ、遥香?」
「え?」
「もう、無理するなよ。」
「え?」
「何があったか知らないけど、無理に思い出さなくていいんだ。」
「なんで…分かったの?」
「その瞳を見れば分かるよ。泣いてたんだろ?怖かったよな。出来事を思い出すだけで辛いのに、犯人が言っていた言葉なんか思い出すな。」
遥香は眠りながら言っていた。
「ごめんなさい」って。
その言葉の中には
「花梨さん」って、何度も言っていた。
だから、きっとその人関係で遥香は襲われた。
目が覚めてからも、犯人が言った言葉を思い出していたことがすぐに分かった。
心療内科医としての判断だった。
「遥香…抱きしめるよ?」
「…うん。」
遥香の体を自分の胸に抱き寄せた。
「怖くない?」
少しだけ身体が震えていることが分かる。
「うん。」
だよな。
俺に気を遣って『怖い』なんて言わないよな。
それが、遥香の優しさだから。
「これからしばらくは、外に出る時は一緒に出ような。いつでも、守れるように。」
「でも、私を襲って来たんだから…もしかしたら、尊が巻き込まれるよ…。だから、ダメだよ。」
「遥香。遥香がそんなことを気にしなくていいんだよ。遥香を守るためなら俺は命張ってでも守る。それくらい遥香のことを愛してるから。だから、もう1人で悩まなくていいから。いつも言ってるだろ?何かあったらすぐに言えって。遥香の抱えている悩みを半分にして、一緒に背負っていこう?それが、一緒になるってことだろ?2人でなら、悲しみや苦しみが半分にできるだろ?もう、1人で抱え込むな。」
遥香を抱きしめながら、しっかりとこの温もりを感じながら口にしていた。
遥香にはもう傷ついてほしくない。
だから、今まで以上に守っていこうって決めた。
遥香とこれからもずっと一緒にいれるように。
遥香は、ずっと胸の中で泣いていた。
その小さい背中を優しくなでる。
きっと、傷の痛みよりも心の痛みの方が上回っている。
遥香の心の負担を減らすために、1人で抱え込ませない。
大切に守っていくから。
2人で幸せに過ごすために。
「尊…?」
「どうした?」
「ありがとう…」
「あぁ。」
遥香の涙を拭いしばらく泣き止むまで落ち着かせた。
「大丈夫か?」
顔を覗き込むと、顔を逸らされてしまった。
「遥香?」
「尊…」
「頭痛いか?」
俺の言葉に遥香は頷いた。
「ちょっと横になろうか。痛みはどっち?」
「んー、左。」
痛みの感じる左側の頭を下にして遥香を寝かせた。
「目元冷やすか?」
「うん…」
俺は、ナースコールを押して保冷剤とタオルを持ってきてもらうように伝えた。
しばらくは遥香を1人にはできない。
むしろ、今は1人にしておきたくない。
少しの移動時間でさえ、遥香に何かあったらって思うと怖い。
遥香が眠り続けていた1週間は生きた心地がしなかった。
もう、遥香がいなくなることなんて考えたくない。
「失礼します。」
近藤さんにそばにいてもらうように頼むか。
「近藤さん、悪いんだけど…」
「分かってます。」
「え?」
「遥香ちゃんのそばにいます。私もそのつもりで、残りの仕事はほかの看護師に任せてきましたので。今は、遥香ちゃんのそばにいてあげたいんです。」
近藤さんも、ずっと遥香の心配をしてくれていた。
「ありがとう。よろしくな。」
「はい。」
近藤さんが一緒なら、安心できる。
ずっと、一緒に遥香のそばで看護をしてくれていた近藤さんなら、恐怖心も和らぐだろう。
俺は、後の事は近藤さんに任せて午後の外来の診察に向かった。