LOVE物語2
ーside遥香ー

気付けば、目が覚めると朝になっていた。

「おはよう。」

「遥香、おはよう。」

早いな。
いつ着替えたんだろう。

尊は新しいワイシャツを身にまとっていた。

「体調はどうだ?」

何も言わない私に尊は聴診器を胸に当ててきた。

「ちょっと、深呼吸してみて。」

尊の言われたとおり深呼吸をした。

「今日はゆっくりしてな。喘鳴きこえてるから。」

「分かった。」

「とりあえず、吸入しようか。」

「うん。」

私は吸入を行った。

「なぁ、遥香?今日の夕方の5時に仕事終わるから、その時警察の人に話せるか?」

「え?」

「あの日に何があったのか。遥香が、話せるようになってからでいいって警察の人も言ってくれてるんだけど、一応遥香にも話しておこうって思って。」

「大丈夫。話せるよ。」

「…えらいな。遥香。なるべく俺も遥香の代弁するから。あの場には俺はいなかったけど、遥香の言いたいことくらいは分かるようになったから。」

「尊、私の代弁うまいもんね?」

「まあな?」

にっこり笑う尊の笑顔を見ると、ちゃんと何があったのか話せる気がする。

「本当に今日でも大丈夫?」

「うん。」

「じゃあ、夕方までに来るからちゃんとゆっくりして休んでてね。」

「分かってる。」

尊と分かれてから私はしばらく横になった。

眠気に襲われて気付けば眠りについていた。

寝たり起きたりと浅い眠りを繰り返していると気付けば5時になっていた。

もうそろそろ、尊くるかな。

「遥香。」

「尊。」

尊が入ってきて安心したのもつかの間。

後ろには、2人の警察官が立っていた。

その姿に、身体が強ばった。

8歳の頃、1度お世話になってるから。

この人達に施設の手配とかしてくれた。

「こんにちは。」

「どうも…。」

「相変わらずだね。」

それにしても…

よく覚えてるね。

2人は、10年前とあまり変わっていない。

でも、私は成長した。

顔が変わってないのかな。

そんなことを考えてると…

「やっと、幸せ見つけられたんだね。」

警察官が私に尊を見てから言った。

「え?」

「表情が柔らかくなったから。」

「そうかな…。」

「うん。そうだよ。それで、本題に入っても大丈夫?」

「…はい。」

「遥香ちゃんのことを刺した人と面識はあったのかな?」

「はい。同じ高校で私と同じ施設の人だったみたいです。」

「やっぱりそうか…。遥香ちゃんのことを刺す前に、その人は何か言ってた?」

…なんとなくでしか覚えてないけど、その人のお姉さんは私のせいで自殺を謀ったと聞いた。

その原因が、尊と一緒に暮らし始めたから。

だけど、そんなこと尊には言えない。

「話せない。」

気付けば私はそう口にしていた。

「まだ、辛いかな?」

辛いとかの問題じゃない。
だって、そんなことを話したら尊はきっと自分を攻める。


「分かった。佐々木さん、ちょっと2人にしてもらえますか?」

何か私の気持ちを悟ったのか、尊にそう言っていた。

「分かりました。遥香?大丈夫?」

「大丈夫。」

尊は、私のことを心配してそう言ってくれた。
それを言うと尊は病室から出た。

「もしかして、佐々木さんを理由にだよね。」

「…はい。」

「やっぱりそうか…。詳しく話せる?ゆっくりでいいから。」

「犯人のお姉さんは、尊のことが大好きだったみたいです。でも、私が一緒に暮らしてるって聞いて自ら命を絶ったそうです…。私、やっぱり幸せになったらいけないんですか?」

「そんなことないよ。お姉さんは、ショックだったのかもしれない。だけど、それは遥香ちゃんのせいじゃない。実際、犯人のお姉さんは、佐々木さんに告白したみたいなんだ。でも、佐々木さんは振ったみたいだよ。もう、そこで自分の生きてることが分からないと言っていた。だから、犯人は遥香ちゃんが佐々木さんと住んでいるということを聞いて、大きな恨みを持ったらしいんだ。だから、遥香ちゃんが攻められたりするなんて絶対にあってはならないことなんだ。それに、遥香ちゃん自身も自分が幸せになったらいけないとか思ったらだめだよ?遥香ちゃんは、もう苦しんできたんだから。今度は、遥香ちゃんが幸せを掴む番だよ。」

優しい警察官の言葉に私は涙が出ていた。

思い悩んでいた心が軽くなった。

私は、この警察官に救われた。

「私、もう攻めなくていいんですよね。」

「あぁ。佐々木さんに寄りかかっていいんだよ。1人で思い悩まないで、助けを求めていいんだから。佐々木さんはちゃんと気持ちを受け止めてくれる人なんだから。」

「ありがとう…。」

「ほら。もう泣かない。話を聞かせてくれてありがとうね。ちゃんと聞けてよかったよ。辛いのに、話してくれてありがとう。」

「いえ。犯人捕まえてくれてありがとうございました。」

「早く元気になってね。」

「はい。」

笑顔で私にそう言って、2人は病室をあとにした。

やっぱり、昔と変わらない優しさがあった。

心に抱えた大きな負担が軽くなった。

「遥香。大丈夫?」

泣いてる私を見て、尊が駆け寄ってきた。

「大丈夫。」

「そんなに泣いてるのに、よく大丈夫って言えるな。」

「大丈夫だから。嬉しくて…。」

「そうか。昔の警察官でよかったな。」

「うん。」

尊は、私の涙を拭ってくれた。
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