うちの弟がモテすぎて困る。
「ゆづくん怒ったかな?」
「ん、なんで?」
私は志穂が買ってきてくれたたまごサンドを頬張っていた。……うま、なにこれ!何個でも食べれちゃいそう。
「ほら、私昔みたいに〝ゆづくん〟って呼んじゃってるじゃん。本人を目の前にして呼んだの久しぶりだから嫌がってたかなって」
「呼び方なんてアイツ気にしないから平気だよ」
私はそれよりもサンドイッチの美味しさに感動してる。最近バク食いしちゃうから気をつけなきゃって思ってたのにダメだ。
「サンドイッチゆづくんに取っとく?」
「いいよ。ってかあと1個しかないしアイツにあげるくらいなら私が食べる」
志穂がいつも結月のことを気にかけてるのは知ってるけど、私はまだ朝の暴言を許してないからね。
あの言葉使いを志穂にも聞かせたい。いや、アイツにラブレターを出してきた女子みんなに聞かせてやりたいよ、本当に。
中には長い文面の子もいたのにそれを一行も読まずにゴミ箱へ捨てるような奴だよ?
次の日「返事はどうでしたか?」って聞かれる私の身にもなれって感じ!
「うーん、今は恋愛に興味ないみたいだよ」とかなんで私が気を遣って結月をフォローしなきゃなんないわけ?
あー思い出したらムカムカしてきた。
「葉月、眉間のシワ」
「……え?」
ようやく我に返った私は志穂に指摘された眉間を手で押さえた。
「葉月は考えごとするとすぐ顔が険しくなるんだから」
「ご、ごめん」
「ふふ、サンドイッチもっと買ってきたら良かったね。お母さんとお父さんも確か好きだよね」
「うん!お母さんはハムサンド、お父さんは私と同じたまごサンドだよ。駅前にこんな店あったっけ?」
「先月できたらしいよ。場所はね……」
せっかく志穂といるんだからイライラしないようにしよう。でもアイツ本当に遊びにいかないのかな。
雨も今のところ降りそうで降らないし、どっかいけばいいのに……。