うちの弟がモテすぎて困る。



私は飲み物を勢いよく飲み干して、話を変えた。


「そういえば志穂、彼氏とはどうなの?」

至って普通の恋愛の話。


志穂にはもうすぐ1年になる大学生の彼氏がいる。

恋愛未経験の私にとって、志穂から聞く彼氏の話は勉強になることばかりで。同級生なのに志穂が大人っぽいのは年上の人と付き合ってるからだと思う。


「うーん。最近は勉強が忙しいみたいでなかなか会えてないんだけど、電話は寝る前に毎日してるよ」

「毎日?話すネタとか困らない?」

「はは。ネタなんてないよ。今日はなにをしたとか、なにを食べたとかそんな小さな話でもすごく楽しいよ」


付き合うと食べた物の話とかもするんだ!私すぐ忘れちゃうタイプだから、そういう場合はどうするの?

いや、その前に恋愛する予定もできる予定もないんだけどさ。


リビングの雰囲気が変わって、私のイラつきも収まってきた頃、ガタッと結月が急に椅子から立った。


「あれ、ゆづくんどうしたの?」

「……部屋に戻る」

まだ紅茶が残っているのに結月はリビングから出ていった。


「私の恋愛の話なんてつまらなかったよね」

「いやいや、志穂が気にする必要ないから!むしろあいつにしてはよく座ってたほうだと思うよ。部屋でゲームでもするんだよ!きっと」


待て待て待て。

結月を必死でフォローしちゃってることは置いておいて。


結月のあの顔。不機嫌とはまた違うあの顔……。


一応16年間結月の姉をしてるし、ずっと見てきたから分かるんだけど、あの顔は欲しいものが手に入らなくて、ふてくされている顔だ。

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