うちの弟がモテすぎて困る。
え、なんで?
志穂の恋愛の話をしてただけじゃん。
ふてくされる要素なんてないよ。ひとつの可能性を除けば。
「今日ね、オススメのボディークリーム持ってきたの。フルーツミックスの香りですごくいい匂いだよ。お風呂あがりに葉月にも塗ってあげるね」
志穂のお泊まりセットの中身は本当に可愛いものばかり入っていて、ガラス瓶に入れられた化粧水にリボンのヘアバンド。それから淡いピンク色のパジャマにはちみつ味の飴まで全てが可愛らしい。
私が男だったら間違いなく惚れている。
外見も内面も完璧で天使みたいに優しいし、私はもちろん大好きすぎるんだけど……え?
え?え?
まさか……結月のヤツ……。
いや、まさか。まさかねぇ……。
そんな疑問を抱えたまま、夜を迎えた。
晩ごはんはお母さんがトマトの冷製パスタを作ってくれて、サラダは志穂が手伝っていた。
「葉月はなにもしないから助かるわ」なんて、お母さんは上機嫌で。おまけに冷蔵庫にケーキがあるんで食後に食べてください、なんて言われたらお母さんの鼻歌はそれはそれは大きな声で。
本当に志穂はよくできた子だよ。
私が産んだわけでも、育てたわけでもないけどさ。