うちの弟がモテすぎて困る。


その夜、志穂と同じ匂いのボディークリームを付けて、同じベッドに寝た。

いつもなら30秒はかからず眠りにつけるのに、今日は天井を見つめながらすでに2時間が経っていた。


考えているのは結月のこと。

誤解がないように言うと、結月の志穂への気持ちのこと。


振り返ってみれば、それらしい行動がなかったわけじゃない。3人で遊んでた時も志穂に対しては女の子扱いしてたし。


思春期真っ只中な時に結月が引くぐらいバレンタインのチョコレートを貰ってきたことがあって。志穂が気を遣って「ゆづくんにも」と手作りチョコをおすそわけしてしてくれた時も。

どうせいらないよね?って私が食べようとしたらぶちギレされて、「ブタがチョコ食ってんじゃねーよ」とか暴言吐かれたっけ。


たしかあの時、他の子から貰ったチョコは食べなかったのに、志穂のチョコだけは食べてた。

そう考えれば色々と予兆はあった……気がする。


なんだか自分の推理がピタリと当てはまってしまい、私はたまらずにベッドから出た。

そしてリビングへ水を飲みに行くと、暗闇の中でテレビだけが付いていた。


ソファーに横になっているのは結月で寝ていると思いきや、ばっちり目は開いている。

深夜にやっているサッカー中継を静かな音で見ていて、私はとりあえずコップに水を注いだ。


「あのさ……」

話しかけても返事がない。

ただの屍のようだ、じゃなくて。

< 18 / 34 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop